「ダウ&日経平均2万」突破前に波乱はあるか 今の市場は「欧州の影」を無視しすぎている
「専門家の分析」とは何だろうか
2016年を振り返ってみると、ひとことで言えば、予想が全く的中しなかった。それに関連して、今回は筆者が「専門家とはどのようなものだと考えているか」について述べたい。
筆者の分析の根幹は、「ファンダメンタルズ分析」(経済・企業の実態に基づく分析)であり、実態が示唆する株価や金利、為替相場の適正水準はどこにあり、現実の市場価格がそこからどのくらい上や下に離れているか、というものだ。
ところが相場は、常に実態を反映して動くとは限らない。一部の大手投資家の売買といった需給や、市場心理による買われ過ぎ売られ過ぎなどによっても、形成される。つまり、ファンダメンタルズ分析が有効な局面と、無力な局面があるし、投資家の時間軸(短期か長期か)などによっても、分析の有用性が異なってくる。
それゆえ、筆者が「今はファンダメンタルズ分析が当てはまりにくい相場局面だから」といって、テクニカル分析をにわか勉強して持ち出したり、知ったふりをして需給がどうこう、心理がどうこう、と語ったりしても、無益どころか有害だろう。それはそうした分野に精通した、他の専門家に譲った方がはるかに良い。筆者の役割は、できることとできないことをわきまえ、自分の思考を明確に提示しつつ、ぶれずに愚直に語り続けることだけだ。
以前、あるお客様から、「馬渕さんは見通しとその背景にある考え方を、足元の相場の振れにかかわらず、ずっと変えないね。これは信念があるか、バカなのか、どちらかだね」と言われたが、これ以上の褒め言葉はないと感じた。
筆者は、専門家は道具だと考えている。道具はさまざまだ。同じ刃物でも、カミソリもあればナタもある。例えば、木を切り倒すべき局面では、カミソリでは使えない。
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