「教育困難校」生徒が奨学金地獄に陥る仕組み スマホ中毒で非現実的な夢しか考えられない
特に高等教育へ進学する場合は、本人の興味や関心が、将来、学ぶ分野を決めるスタートラインになる。しかし、「相対的貧困」の家庭で育つことの多い教育困難校の生徒は、幼い頃からさまざまな体験をする機会に乏しい。経済的に豊かな家庭に生まれた子どもであれば、当然、体験しているようなイベントや習い事もしていない。また、地域や親戚の人とのつながりも少ないので、家族以外の人から受ける刺激も少ない。
学校から帰ると、ひとり、あるいは兄弟姉妹がそれぞれの画面に見入りながら狭い室内でゲームをしながら親の帰りを待つ生活を続けていた彼らが、ゲームに最も関心を持つのは自然な流れであるといえよう。1970年代、1980年代生まれの彼らの親世代も、ゲームに熱中した世代である。子どもにゲーム機を与え、自分たちが子どもにかまっていられない時間を、それで埋めさせることに罪悪感を感じることはないようだ。
楽しみは、ゲーム、マンガ、アニメ
「教育困難校」だけに限らず、現在の高校生に好きなもの、興味があるものを尋ねると似たような答えが返ってくる。高校生を対象として行われたアンケート結果を見てみよう。数年前のものではあるが、日本自動車教育振興財団の調査では、高校生の関心事のトップ5は音楽、ゲーム、マンガ・雑誌、ファッション、SNS・インターネットだ。特に上位3つは60%近い回答となっていた(「高校生のクルマに関する関心度をみる」日本自動車教育振興財団『Traffi-Cation』2014年春号)。
また、電通総研電通若者研究部が2013年に行った調査では、「あなたがハマっていることをお知らせください」という質問に対する高校生の回答として、音楽鑑賞、PCでのインターネット、アニメ、マンガ、カラオケ、ゲーム機器でのゲーム、スマホなど携帯電話でのインターネット、芸能人・アイドル、ファッション、読書(マンガ)がベスト10となっている(「好きなものまるわかり調査」)。これらの調査では、高校生の学力差は考慮していないが、「教育困難校」の生徒では、男子だと、ゲーム、アニメ、スポーツ観戦、音楽。女子ではゲーム、アニメ、服・メイクが圧倒的な人気のように筆者は感じている。パソコンを持っていない家庭がほとんどなので、ゲームをはじめ、音楽もアニメもスポーツもスマホで楽しむ。これが、彼らが一時もスマホを手離せない理由のひとつでもある。
進学校や中堅校に通う生徒は、ゲームやアニメなどにも興味は持っていても、それしか知らない、それしか興味がないというわけではない。幼い頃から多彩な体験をして、他の楽しみがあることも知っている。高校でも、卒業生やある分野の成功者を呼んで仕事の話をしてもらい、生徒の視野を広げて意識を高めることを目的にした進路行事が度々行われている。ゲームは好きだが、それは自分の興味・関心の一部分で、自分が将来学ぶことや仕事に選ぶことは別にあるというスタンスになる。
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