「AI」が書いた小説はどれだけ面白いのか 人工知能で短編小説に挑戦した著者が語る

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まず「東京」という記号を見つけ、それが地名であることはインプットされてる。その地名に対し「ホテル」という記号を取り出す選択も入力されてる。それで「東京のよいホテルをお教えしましょうか」とか答えてくる。人間に仕込まれたとおり、条件反射的に回答を出してるだけ。それがマアマアの精度でできるようになった、というところです。でも東京という街やホテルが何なのかはまったく理解してない。われわれが読んだり話したりするうえでの基本情報がコンピュータにはないわけ。そのうえで動いてるだけで、あくまでも理解したふり、理解したように見せかけてるだけです。それでも人間はいちおう対話になっているから通じてると思っちゃう。

新しい発想のトリガー

──コンピュータの使用が、小説に革新性をもたらす可能性は?

コンピュータが小説を書く日 ――AI作家に「賞」は取れるか
『コンピュータが小説を書く日 AI作家に「賞」は取れるか』(日本経済新聞出版社/216ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

それは十分にあると思います。新しい道具というのは新しい発想のトリガーになる、という意味で。

囲碁の電王戦でコンピュータが予想のつかない手を打ってくる。それはどういうことかというと、人間が筋が悪いと排除した手を、コンピュータは公平に並べて見るわけ。一見ばかげて見えた手が、振り返るとよかった、気づかなかったと。単に人間が経験値から省いてしまうのをコンピュータはしないだけの話。コンピュータの能力でも、ましてや創造力でも何でもないわけです。

同じように小説でも、人間が見落としてた何かが起きる可能性はある。自分たちが知ってる方法や展開と違うことを突然コンピュータがやりだして、それを人間が新鮮に感じる。そういうことはあるかもね。

──売り物として立派に通用する、つまり読者に面白いと思わせる、裏返せば、コンピュータが人間の感性を予測して小説を書く日がいずれ来るのでしょうか?

テキストは作れるので、その文章を読んで、出来がいいとか駄作とか、評価するようなプログラムを人間が作れるどうかに、すべてはかかっているわけですね。今の僕の見解は、原理的にできないことはないと思うけど、どうやったら作れるかはさっぱりわからない。だから今のところできる見通しはない、と言っておきます。

中村 陽子 東洋経済 記者

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なかむら ようこ / Yoko Nakamura

『週刊東洋経済』編集部記者

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