「自動運転で米国横断」、テスラは正気なのか イーロン・マスクの野望はまだまだ尽きない
「来年末までにロサンゼルスからニューヨークまで、車のハンドルに指1本触れずに横断してみせる」
米電気自動車ベンチャーのテスラモーターズを率いるイーロン・マスクCEO(最高経営責任者)は、前代未聞の野望を恥ずかしげもなくさらっと口にした。10月19日(米国時間)、テスラは今後生産されるすべてのテスラ車に完全自動運転機能を持つハードウエアを搭載することを発表した。マスク氏が「レベル5」と表現した完全自動運転は、ドライバーが目的地を入力し、道順を選択しさえすれば、走行中に操縦する必要がないことを指す。
テスラはちょうど1年前の2015年10月に「オートパイロット」と呼ぶ運転支援機能の搭載を始めたばかり。カメラやセンサーを用いた自動の車線変更や、前方車の追従が可能になっていた。
「まるでスーパーコンピューターだ」
今回発表された新型ハードウエアは何が変わったのか。まず外界の状況を認識するカメラの数が従来は1個だったのが、今回8個になった。これにより車の周囲360度、最長250メートルの範囲を認識する。12個の超音波センサーは、従来比2倍の距離までの物体を検知する。また、コンピューターの処理能力は40倍になり、1秒に12兆回の計算を行うのだという。多くの自動車メーカーが採用する「ライダー(レーザー光を用いるレーダー)」は組み込まれていない。
「車の中にスーパーコンピューターがあるかのようだ」とマスク氏は胸を張る。カメラやセンサーを通じて集められた情報を処理するソフトウエアは自社で開発した。従来はイスラエルのモービルアイ社のシステムを採用していたが、今年5月にオートパイロット搭載車が米国で事故を起こし、安全性をめぐって対立し契約を打ち切っている。
「(ハンドルに)少しも触れずに運転ができる」とマスク氏は言うが、まだ現実的に可能にはなっていない。今後数百万キロの実走行データを収集してソフトウエアの検証を行ったうえで、規制当局の承認を得なければならないからだ。しかしマスク氏はこう主張する。「重要なのは完全自動運転を可能にするための土台が車に取り付けられたこと。しかもそれは人間が運転するよりも2倍、あるいはそれ以上の安全レベルだ」。
他社に先駆けて完全自動運転の実車採用を打ち出したマスク氏。だが19日の発表時に行われた電話会見では安全性をめぐる質問が相次いだ。主な一問一答は次ページ以降の通り。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら