日テレとIIJが「動画配信」で提携したワケ 普及期の動画サービス、人気を高めるには?

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 IIJにおけるコンテンツ配信の歴史は古く、1998年からサービスを提供している。2008年には動画配信サービスの「アクトビラ」(パナソニックやソニー、シャープなど、テレビメーカー各社による合同事業)の配信プラットフォームを担当した。2013年からは毎年、朝日放送で甲子園の全試合をネットでストリーミング中継している。そのほか、4K、8Kコンテンツ配信についてNHK(日本放送協会)と共同研究も重ねてきた。

日本テレビは現在、動画サービス「hulu」を展開し、オリジナルドラマを投入するなど、会員数を拡大している真っ最中。今回は通常の営業においてIIJが日本テレビ側と話をする中、「コンテンツをエンドユーザーに届けるところまでしっかりやりたい」という日本テレビのニーズを聞いたことがきっかけだった。

IIJは商用インターネットの草分け企業。鈴木幸一会長は多方面で深い知識を持つ、業界のご意見番だ(撮影:梅谷秀司)

一方、IIJの鈴木会長も、以前から放送コンテンツを通信のネットワークで流すことについて、かなりのこだわりを持っていた。最近では、海外で通信事業者がコンテンツ会社を買収する例もみられるが、鈴木会長はずっと前からこうした動きを予見していたという。

そして、鈴木会長はコンテンツ配信に限らず「それぞれの会社が独自にシステムを構築するのではなく、仕組みを共通化することでコスト削減ができる点がインターネットの長所」という持論を持っている。

こうした背景から、今回の取り組みも、民放テレビ局はもちろん、スマホ向けコンテンツを展開する企業なども含めて、さまざまな企業が参加するオープンなプラットフォームにする考えだ。現在、日本テレビを中心に、出資を含めた打診を各社に行っている段階だという。

本当の「オールジャパン」になれるか?

民放各局はすでに、共同で公式テレビポータル「TVer(ティーバー)」(ドラマやバラエティを無料で動画視聴できる見逃し配信サービス)を展開しているが、プラットフォームといわれるのは、あくまでサービスの形としての話だ。今後新会社への期待が高まれば、民放各局が同システムを採用し、本当の「オールジャパン」の配信システムが実現する可能性もある。

もちろん、CDNはあくまで配信における裏方の仕組みのひとつ。実際にサービスを利用するユーザーは、その存在を気にすることはないだろう。

しかし、高品質な動画視聴ができるようになれば、サービスの品質は向上し、ユーザーの利用もさらに伸びていくはずだ。国内外の動画配信サービスが本格化する中、将来の市場拡大に向けて、日本テレビとIIJのタッグが果たす役割は大きいものかもしれない。

田邉 佳介 東洋経済 記者

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たなべ けいすけ / Keisuke Tanabe

2007年入社。流通業界や株式投資雑誌の編集部、モバイル、ネット、メディア、観光・ホテル、食品担当を経て、現在は物流や音楽業界を取材。

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