朝日新聞・テレビ朝日 株式持ち合いの真相
資本・業務提携を発表したテレビ朝日と同社筆頭株主の朝日新聞社。テレ朝は朝日新聞の筆頭株主で社主の村山美知子氏から38万株(11・88%)を約239億円で取得し、持ち合いを実施。今後は新聞紙面とテレビ番組の連携や、ネットなど複数媒体を使った情報提供を行うクロスメディア戦略など事業提携を推進。ITや情報通信企業を軸に第三者との提携も模索する。
「新聞、テレビ、雑誌、ラジオの4媒体の力が落ちている。(提携で)メディアの衰退を避けたい」。6日の会見で、テレ朝の君和田正夫社長は厳しい面持ちで語った。朝日新聞の秋山耿太郎社長も「ネット時代で既存のメディアを取り巻く環境が厳しい中、同じグループ内でより広く深い関係を築く必要がある。新聞の支配的な関係でなく、(持ち合いで)パートナー的な関係になる」と話す。
微妙な社主との距離
だが、今回の提携の目的は「テレビ朝日との提携関係強化と、朝日新聞社の株式の長期的な安定化という二つの側面がある」とも秋山社長が語るように、朝日新聞の安定株主確保という側面が強い。
朝日新聞は創業家である村山家と上野家が発行済み株式の6割超を握る。
特に創業者の孫で36・46%を保有する村山美知子社主は87歳と高齢で、株式の相続問題が同社の経営陣にとっても頭痛の種だった。その村山社主から「テレビ朝日に新聞株を譲渡したい」と秋山社長に連絡が入ったのが今年1月。その後、テレ朝へ買い取りを打診し、1株6万3000円で話がまとまった。村山社主はこの他に、村山家ゆかりの財団法人香雪美術館にも保有株を譲渡。依然、筆頭株主ではあるが、持ち株比率が14・61%まで低下。朝日新聞に対する合併や定款変更などに必要な特別決議を否決できる拒否権(発行株数の3分の1)がなくなった。朝日新聞は創業家から、一定の経営独立を確保した格好だ。
だが、新聞やテレビの置かれた環境は厳しい。収益源である広告は、インターネット広告の拡大を受け、テレビと新聞の広告市場が3年連続で縮小している。「メディア激動期にあって、両社がともに勝ち残ることが共通目標」(秋山社長)だけに、早急なシナジーの実現が必要だ。
(中島順一郎 撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済)
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