「選手視点の中継」というスポーツの大革命 仮想現実はスポーツをどう変えるか?

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これは、そう遠くない未来に実現するであろう、スポーツの観戦スタイルの一例である。個々人が視聴したい場面、視聴したい視点を選び、まるで自らがグラウンドに立ち、選手として競技を行っているかのようなVR(仮想現実)を映像で体験できる。スポーツファンであれば誰しも一度は想像し、望んだことであろう。その夢が、叶おうとしている。

インターネット動画配信とVRがもたらす体験

スポーツには、大きく分けて競技者と観戦者の2つの主体が存在する。スポーツおよびその関連市場を継続的に発展させていくためには、競技者のレベルアップだけでなく、観戦者に向けてスポーツの面白さをいかに伝えるか、そしてスポーツというコンテンツに価値を感じてもらい、対価を支払ってもらえるかが重要となる。ただ、日本ではゲームや音楽、映画といった他のコンテンツの楽しみ方がICTの進化やライフスタイルの変化に対応する一方、スポーツ観戦者にとっての環境は大きくは変化していなかった。

その観戦者向けの環境を大きく改善し発展させる可能性があるICTの例が、冒頭に紹介したインターネット動画配信であり、VRである。

可能性と述べたが、紹介した事例のうち、すでに実現されているものも複数存在する。複数のカメラアングルからの映像配信、そしてリプレー映像の配信である。米国のメジャースポーツや欧州サッカーではインターネットを活用した動画配信サービスが活発であり、視聴者のニーズに応じた複数種の映像が、競技団体やチーム、スタジアムのWebサイト上で提供されている。日本国内においても、ソフトバンクのスポナビライブ、パフォームグループのDAZN(ダゾーン)など、スポーツ専門のインターネット動画配信サービスが開始されている。

一方でVRである。VRとは「Virtual Reality」の略称で、「仮想現実」と訳される。立体的に奥行きを持たせた映像を、専用の非透過型視覚装置を通じて視聴することで、利用者がその映像の内部にいるかのような感覚(いわゆる没入感)を得ることができる。また、利用者の動き・操作によって、仮想空間に変化が生じる(相互作用性)。このVRこそが、選手と観戦者の垣根をなくし、観戦者自らがグラウンドに立ち、選手として競技を行っているかのような体験の鍵となる。

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