警察の「職務質問」は一体どこまで正当なのか

納得のいかない職質にはこう対処せよ

実際に警察署には、警察本部の各部各課から、様々な努力目標と称する数字が示される。警察官採用の応募者数の確保から始まり、暴力団員の検挙件数・人数、覚醒剤事件の検挙件数・人数、少年補導の人数、交通違反の検挙件数等、多くの部門が警察署に努力目標と称するノルマを示し、その達成を求めているとみられる。その数字に合理的な根拠はない。前年実績プラス何%が根拠だ。

警視庁をはじめ多くの都道府県警察では、地域警察官に対して、努力目標として、年(月)間の職質による検挙件数のノルマを課しているようだ。ノルマの達成度合いは年間の勤務評定にも影響し、それは昇任試験の成績にも加味されることになる。

そのため現場では、地域警察官による職質の要件を欠いた職質、任意の限度を超えた職質が横行することになる。また、職質が比較的軽微で検挙が容易な、占有離脱物横領(多くは放置自転車の乗り回し行為)や自転車盗等の事件に向けられることになる。こうした事件は少年によるものも多いところから、地域警察官の職質の対象が、少年や比較的抵抗の少なそうな相手に向けられやすい。

実質”ノルマ”は交通違反でも

だから交通違反では、ノルマを達成するため、物陰に隠れて一時停止違反やシートベルト着装義務違反など、摘発しやすい軽微な違反の案件に血道をあげることになる。職質検挙ができないなら、せめて、交通違反でもといった発想だろうか。交通法令違反の摘発についても、実質的なノルマが課されているとされる。

職質のノルマに関する限り、市民の安全を守るという地域警察官の本来の任務とは裏腹に、市民の期待と全く別の結果を生む。地域警察官の手にある職質という武器は、犯罪者だけではなく、時として善良な市民にも向けられる可能性があるのだ。ここに警察が市民の信頼を失う要因がある。

ならば職質はどこまで認められるのか。

警察法では、職質対象者が職質に応じない場合であっても、判例や学説をもとに、説得や一定の限度の実力行使も認められるケースまたは限界について、説明している。現場の警察官の職質の実態を知るうえでも参考になるので紹介しておこう。

(1)停止、以下は許される

・逃げ出した不審者に質問を継続するため、腕に手をかけて呼び止める。

・逃走しようとした者の前面に立ちふさがる。              

・酒気帯び運転の疑いのある者が自動車に乗り込んで発進しようとしたときにエンジンスイッチを切る。

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