警察の「職務質問」は一体どこまで正当なのか 納得のいかない職質にはこう対処せよ
しかし、市民の日常生活を守る仕事の拠点となる、警察署の交番や駐在所の数は減っている。犯罪が減り始めた2003年から2015年4月までに、全国の交番は6556カ所から6250カ所へ、駐在所は7882カ所から6474カ所へ減少してしまった(『警察白書』)。
同規則によると、地域警察官、言い換えると、交番・駐在所のお巡りさんは、立番や見張り、在所、警らおよび巡回連絡を通常の勤務形態とする。事件や事故の処理は、犯人の逮捕や危険の防止、現場保存など、現場における初動的な措置に限定。以降の捜査は刑事係などの専門警察に引き継ぐ。地域警察官(当時は外勤警察官)の仕事の範囲が、警察庁の指示でこのように限定されたのは、1960年代半ばのことだった。このことが捜査力の低下を招き、ひいては警察全体の捜査力の地盤沈下を招いた。
最近の警ら(パトロール)は、2人1組のパトカーによる警らが中心のようだ。車による警らは、徒歩警らより、警戒網の目は荒くなる。赤い回転灯を回しながら走るパトカーをよく見かけるが、これでは犯罪予防の効果はあるかもしれないが、犯罪の検挙は難しい。地域を回る巡回連絡も、マンションなど市民の居住環境の変化から滞り、住民との接点も失いがちだ。地域警察官のアンテナは昔に比べて低くなっているのは間違いない。
検挙に至るのはごくわずか
地域警察官の勤務形態から、地域警察官にとって「職務質問」(職質)は、犯罪の検挙のための有力な武器だ。
断っておくが、職質は警察官の行政権限を定める警察官職務執行法(警職法)を根拠とするもので、犯罪捜査の端緒となっても、刑事訴訟法による犯罪捜査の権限でない。
『平成27年の犯罪』によると、刑法犯の検挙件数34万6183件のうち、地域警察官の職質が端緒となって被疑者を特定した件数は、「見張り立番中」747件、「徒歩・自転車警ら中」1万3003件、「自動車警ら中」2万1361件、「列車警乗中」223件等で、合計3万5334件だった。これは検挙件数全体の10%に過ぎない。罪種別にみると、「占有離脱物横領」が1万8405件で、49%を占める。「窃盗」では、空き巣など侵入盗254件、自動車盗148件なのに対し、万引き1207件、自転車盗7059件となっている。
地域警察官13万9000人に対し、職質による検挙件数は3万5334件。1警官当たりの検挙件数は約0.27件にしかならない。つまり、1人の地域警察官が年間通じて職質で犯罪を検挙するのは”1件にも満たない”のだ。なおこの統計上の職質が、警職法上の職質と同じかは不明である。地域警察官の職質による検挙は、決して市民が期待するような成果を上げていない。
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