誰も語らない、働く女性の「長時間労働」問題 正社員同様に働き、家事育児も自分の責任
均等法の成立前から、男性の働き方は'80年代に流行したCMソング『24時間働けますか?』を地で行く状態だった。家のなかを切り盛りしてくれる支え手がいるから長時間、外で働くことができる。ところが、働く女性が支え手を期待するのは難しい。
「福祉予算が増えないから保育園や介護施設も不足しています。そうなると女性たちは、男性と同じように長時間働きながら育児や介護も自分でやらなければいけなくなる。当然、できるわけがない。女性に不利な仕組みが最初から取り入れられた構造になっているんです」(竹信さん、以下同)
子どもの世話を実家に頼れる人はいいが、誰もがあてにできる環境ではない。
「仕事と家庭の両立は無理ということで、なかでも事務職の女性たちがパートや派遣などの非正規に流れていきました」
さらに均等法と同年、労働者派遣法が成立する。
「フルタイムで働くのは大変だから、派遣で好きなときに働きましょうね、という触れ込みだった。ところが派遣は低賃金で不安定、家計を支える労働にはなりません。すると男性は、さらに一生懸命に働き続けなければならなくなる」
理不尽な働かせ方がどんどん広がっている
驚くべきことに、日本には長時間労働を規制する法律がない、と竹信さん。
「労働時間の上限は、1日8時間、週40時間と労働基準法で定められています。ところが労働組合と企業側が協定を組み、労組が認めたら事実上、何時間でも働ける仕組みになっている」
つまり抜け穴だ。そうして長時間労働で縛りつけられ、会社の言うままに転勤を強いられてきた日本の男性正社員。一方、女性たちを中心とした非正規枠は拡大の一途をたどっていく。2014年には、働く女性で非正規の占める割合が過去最高の56・7%に達している。
「バブル崩壊後、主婦パート以外にも非正規が広がり、就職先がないから新卒で派遣という人たちまで出てきた。特に単身女性が目立ちます。'08年の年越し派遣村で問題視されたような男性非正規も増えました。そもそも派遣の賃金は市場の影響を受けやすいうえ守ってくれる労組のような存在も少ないため、値崩れしやすい。そうした流れのなかで貧困化が始まります。女性の貧困は今後、さらに深刻化していくでしょう」