買収額上積みで勝利 ソフトバンクの執念 ライバルを振り落としたが、本当の戦いはこれから

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人材育成に躍起

勝利の代償は安くない。ディッシュの乱入によって、ソフトバンクはスプリント買収で15億ドルの負担増となった。外部株主への支払いは45億ドル増えた(持ち分の8%増を勘案すれば約20億ドルの負担増との試算も成り立つ)。クリアワイヤの積み増し分約15億ドルも間接的にはソフトバンクが負うことになる。

ただ、買収のタイムスケジュールは大きく狂わせなかった。というのも、ソフトバンクの資金支援が遅れれば、スプリントが計画するLTEのネットワーク構築もずれ込み、上位追撃が不可能になる。「スプリントにとって当面はLTE網の構築が最優先の課題。多少の出費は問題なしとの判断ではないか」(情報通信総合研究所の清水憲人主任研究員)。

6月21日に開かれたソフトバンクの株主総会で、孫社長は「合併によって端末の購買力が上がる。インフラやITのコスト、営業費用の削減を合わせて年間2000億~3000億円のコスト削減が見込める」とあらためて自信を示した。

「ソフトバンクの事業はドメスティックで、意外にも英語を話せる人材が少ない」(ソフトバンク幹部)。今年1月からTOEICで高得点を獲得した社員に最大100万円の報奨金を支給するなど、米国展開に向けた人材育成に躍起となっている。「特に管理職以上の社員は猛烈に尻をたたかれている」(関係者)

2006年に1.8兆円でボーダフォン日本法人を買収し、携帯事業に参入したソフトバンク。高値づかみと揶揄されたが、今や高収益事業となった。スプリント、クリアワイヤを「安い買い物」とすることができるか。孫社長の勝負は続く。

(週刊東洋経済2013年7月6日号)

田邉 佳介 東洋経済 記者

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たなべ けいすけ / Keisuke Tanabe

2007年入社。流通業界や株式投資雑誌の編集部、モバイル、ネット、メディア、観光・ホテル、食品担当を経て、現在は物流や音楽業界を取材。

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