買収額上積みで勝利 ソフトバンクの執念 ライバルを振り落としたが、本当の戦いはこれから
最大のヤマ場は乗り切った。6月25日に開かれた米・携帯3位、スプリント・ネクステルの臨時株主総会で、ソフトバンクによる買収が承認された。
スプリントをめぐっては、今年4月に米衛星放送大手のディッシュ・ネットワークが対抗買収を提案。一部株主がディッシュ支持の動きを見せたため、一時ソフトバンクは米4位のTモバイル買収も検討した。結局、買収総額を201億ドルから216億ドルに引き上げ、ディッシュを振り落とした。
買収に必要な連邦通信委員会(FCC)の承認は残るが、「順調に手続きが進んでいる」(孫正義社長)。7月上旬にもソフトバンクは契約数9700万、世界3位の携帯電話会社として新たなスタートを切る。
同じく、ディッシュと繰り広げてきた米クリアワイヤの争奪戦でも、スプリント&ソフトバンクの勝利が確定的となった。
高速無線通信のサービスを展開するクリアワイヤ。株式の50%強を握るスプリントが、昨年12月に1株2.97ドル、総額約22億ドルで残りの株を買い取り、完全子会社化すると発表。そこに割り込んだのがディッシュだ。1月に1株3.3ドルを提案。スプリントが3.4ドルに引き上げると、さらに4.4ドルを提示した。
クリアワイヤは売上高12.6億ドルで13.7億ドルの営業赤字を垂れ流す業績不振会社。だが、米国の携帯上位2社、ベライゾン・ワイヤレス、AT&Tを上回る160メガヘルツの周波数帯を保有する。携帯事業会社にとってこれはお宝の経営資源だ。
スプリントが完全子会社化を目指したのも、クリアワイヤの周波数帯をフルに活用するため。ディッシュが大株主に浮上すれば、スプリントは自由に周波数帯を利用できなくなる。ソフトバンクの計画にとってもクリアワイヤの行方は大問題だ。
スプリントが1株5ドルまで価格を引き上げたことで、6月20日にクリアワイヤはディッシュとの交渉を打ち切った。26日にはディッシュが撤退を発表。7月8日に予定されるクリアワイヤの臨時株主総会でスプリントの提案が承認される見通しだ。
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