ソフトバンク、買収額上乗せで対抗 スプリント争奪戦は波乱含みに

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ソフトバンクは11日、現在進めている米スプリント・ネクステルの買収に関して、投資総額を201億ドルから216億ドルに引き上げると発表した。このうち、約166 億ドル(変更前は約121 億ドル)はスプリントの株主に支払われ、50 億ドル(同じく80 億ドル)がスプリントの財務体質の強化等に投じられることになる。4月には米衛星放送大手のディッシュ・ネットワークがスプリント買収に対抗馬として名乗りを挙げ、通信と放送を融合させたサービスなどをアピール。提案内容はソフトバンクより優位だと主張していた。

これに対し、ソフトバンクも決算会見後に急きょ説明会を開催し、孫正義社長が英語によるプレゼンを披露。両社の提案内容の比較やこれまでの実績(ソフトバンクテレコム、ソフトバンクモバイル、ウィルコムのV字回復、LTEサービスなど)をアピールし、「両社のシナジーを考慮すると、ソフトバンクはディッシュより優位な提案をしている。買収金額を見直す必要はない」と一蹴していた。

株主に早く決めていただきたい

しかし今回、買収額を積み増したのは、「変更前の提案内容でもディッシュ社の提案より優位だと認識しているが、取引に遅れが生じるよりは、株主の皆様にさらによい金額を提示することで、早く決めていただきたい。そうした狙いから、スプリントの取締役会と合意した」(ソフトバンク広報室)。スプリントの取締役会と買収を審査する特別委員会も、本日付でディッシュの提案について「より優れた提案につながる合理的な見込みがない」と決定し、株主総会では、ソフトバンクの提案に賛成票を投じるよう推奨しているという。

今後のスケジュールだが、スプリントの臨時株主総会は6月12日から25日に実質的に延期されている。ディッシュ社は18日までに対抗策を提案することができる。無事に総会を通過できれば、最終的な取引完了は7月上旬(以前は1日としていた)となる見通しだ。ただし、ディッシュ社が再提案に乗り出せば、さらなる買収合戦に発展する可能性もある。一部では、ソフトバンクはスプリント買収失敗に備えて業界4位のTモバイルの買収も検討しているとされる。スプリント争奪戦の行方は、まだまだ波乱含みだ。

(写真は4月の決算説明会におけるソフトバンクの孫正義社長、撮影:今井 康一)

田邉 佳介 東洋経済 記者

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たなべ けいすけ / Keisuke Tanabe

2007年入社。流通業界や株式投資雑誌の編集部、モバイル、ネット、メディア、観光・ホテル、食品担当を経て、現在は物流や音楽業界を取材。

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