「クールジャパン」、いったい何が目標なのか

コンテンツを支援する戦略が見えない!

精霊の守り人は上橋菜穂子氏によるファンタジー小説で、ラジオドラマや劇場アニメ、コミックなど多くのメディアに展開されている定番の人気作品である。コールドケースはハリウッド制作の人気テレビドラマシリーズをライセンスした作品で、日本を舞台に再制作したものだ。

精霊の守り人は、日本のファンタジー小説らしく文化的に中立で、どの国、地域にも属さない世界観が描かれており、海外にも輸出しやすいテーマ設定と言えるだろう。現地では映像トレンドとして最新のHDR技術を取り入れたソニー製最新プロジェクターを使い、現実には存在しない世界を描いた。

ただし、その絵作りはいい意味でNHKドラマ的。質の高い舞台劇をドラマ的アングルで見せるような絵作りで、リアリティを追求する描き方ではない。このため、HDRとの相性がいまひとつ。

作品の良しあしではなく、映像作品を制作する最新の映像技術に対応する制作機材から映写装置までも含めての「CoH訴求」だとしたら、新たな映像技術トレンドも含めての訴求という面で、作品の選択は誤りだったかもしれない。

ただし、試写の最後に上映された「精霊の守り人Ⅱ 悲しき破壊神」の特別編集版トレーラーは、HDRが生きた洋画的映像演出と絵作りの作品だった。実は、作品を担当した監督が違うとのこと。伝統的な映像表現の枠組みでの表現にこだわるシーズン1の監督に対し、シーズン2の監督は新たな表現手法に対して積極的だったことが、映像作品としての質に変化をもたらしたようだ。

HDRを効果的に使った日本版

一方のコールドケースは、ハリウッド作品をリメイクする珍しい国内ドラマ。吉田羊主演の作品は、完璧に原作の世界観を意識しながらも、グローバルでの発信や最新技術との融合や放送だけでなく、パッケージ販売も意識した作りが印象的だった。

ワーナーが製作したオリジナルのコールドケースとの違いは、“青”を感じさせるフィラデルフィアの風景に対して、“緑”を基調とした独特の色調整を施していることが挙げられるが、実はWOWOW版にはさまざまな仕掛けが施されている。

過去にさかのぼった映像では、時代を象徴する(たとえばビデオカメラや8ミリフィルムなど)映像の風合いを表そうとしているが、実はこうした過去映像の中でもHDRをふんだんに使ってまぶしさや不安感の演出などを行っている。

内容はほぼ原作を踏襲しながらカルチャライズ(その国の文化に合わせて内容を変更すること)した作品だが、進化する映像機器や技術トレンドを意識しつつアレンジされた画調には、日本版の独自性を感じさせるものだった。

CoHイベントとしては、プレミアイベント以外にも「国境を越える日本のドラマ」をテーマに、知日派の海外番組バイヤーを交えたパネルが開催された。しかしそれぞれの作品は質が高いのだが、集客力という面ではアニメやフォーマットほどの盛り上がりは演出できていない。日本のドラマを売り込む――という面で成功だったとは評価しにくい。

プロモーションイベントとしては、予算が不足しているように見えた。

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