トランプ大統領を生んだ米国民の怒りとは?

資本主義が「富める者」だけのものになった

昔は、経済とは、将来への希望を生み出すものだった。きつい勤労は報われ、教育は上昇志向の手段であり、功績の大きいものにはそれにふさわしい報奨が与えられ、経済成長はより多くのより良い仕事を生み出し、現役で働いている間は、ほとんどの人の生活水準が上がり続け、子どもの世代は自分たちよりも暮らし向きが上がり……、そんな具合に世の中のゲームのルールは基本的には公正に機能していたのだ。

ところが今や、そんな夢のような仮定は空々しいばかりだ。経済制度への信用はガタ落ちで、あからさまに恣意的な采配や不公正が横行したために、自由経済の基本理念に寄せる人々の信頼感は損なわれてしまった。多くの人々にとって、経済制度も政治制度もいかさまに映り、最初から富裕層にばかり有利に仕組まれているように見えるのだ。

資本主義は「信用」の弱体化に晒されている

資本主義を脅かしているのは、今や共産主義でも全体主義でもなく、現代社会の成長と安定に不可欠な「信用」の弱体化である。大多数の人たちが、自分や子どもたちに成功への機会が公平に与えられているとは信じなくなったとき、「人々の自発的な協力」という暗黙の社会契約によって成り立つ現代社会は瓦解し始める。そして「協力」の代わりに出てくるのが、コソ泥、不正、詐欺、キックバック、汚職、といった大小様々な破滅だ。経済資源は徐々に、生産するためのものから、すでにあるものを守るためのものへと変質してしまうだろう。

だが、私たちにはこうした状況を変える力がある。ごく少数のためではなく、大多数のために機能する経済を再生させる力だ。カール・マルクスが言うところの、資本主義は容赦なく経済格差や不安定の拡大をもたらすなどということは全くない。資本主義の基本原則は不変の法則ではない。すべて人が決め、人が実行していることなのだから。しかし、何を変えなければならないかを決め、それを実行するためにはまず、何がどうしてこうなったのかを理解しなくてはならない。

この四半世紀、私は自分の著作や講義を通じて、米国など先進国に暮らす普通の人々がしっかりと足場を固めることができないまま、募る経済的ストレスにさらされているのはなぜかということについて解き明かしてきた。単純に言えば、グローバル化と技術革新が多くの人々から競争力を奪ってしまったことが原因だ。我々がやってきた仕事を、今や海外の低賃金労働者やコンピュータ制御の機械が、もっと安価にこなしてしまうからなのだ。

私の解決策は(これを唱えているのはほとんど私だけなのだが)、政府をもっと活動家型にすることであった。つまり富裕層へ増税して、そのカネを優秀な教育機関など人々を前進させるための手段に回したり、貧困層に再分配したりするのである。しかし、こうした私の提言は、政府をもっと小さくしたり税金や給付金をもっと少なくすれば、経済は一人ひとりにとってよりうまく機能するはずだと思い込んでいる人々からは、きっぱりと否定され続けている。

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