トランプ氏が直面する問題はこれだけではない。地政学的リスクは冷戦終結以来で最大の水準にある。南シナ海をめぐる緊張に加え、アフガニスタンとリビアの情勢も依然不安定であるし、イスラエルとパレスチナの和平の見通しも厳しい。 ウクライナでの対立が続いていることは、ソ連崩壊以来で米ロ関係が最も緊迫していることを示している。
国際社会は特に、米ロ関係を注視するだろう。NATOを「時代遅れ」呼ばわりしたと批判されたトランプ氏と、ロシアのプーチン大統領との関係は悪くないとされている。
「偉大な関係」を築けるか
トランプ氏が取り組むことになる世界情勢は、かつてとは様変わりした。平和と自由主義、資本主義、民主主義国家の普遍的な秩序のビジョンは、ロシアのような権威主義国家が存在感を発揮する現実へと置き換えられた。 国際テロは激化し、北朝鮮のような国が核兵器を保有している。
トランプ氏は、オバマ政権が在任中の8年間にわたって弱腰だったから、こんな状況になったと主張している。しかし、これは単純すぎる見方だ。米国は依然として世界で最も強力な国家で、圧倒的な軍事力を世界で展開可能だ。
さらに、国際秩序の安定化に向けた動きも主導してきた。一例は、イランと、米国、中国、ロシア、英国、フランス、ドイツとの間で昨年成立した核合意だ。この合意はイランと西側の修交につながり、世界の核セキュリティを強化する可能性もある。
しかし、トランプ氏も議会を支配している多くの共和党員も、この合意を支持していない。トランプ氏はイランを「国際テロの最大の支援国家」と呼び、核合意を見直す意向を示している。
一方で、中国の台頭は、近年の世界情勢で最大の変化の一つだ。トランプ新大統領の下で両国が、南シナ海問題などを解決する方法を見出すことができ、気候変動のような問題でも協力できれば、米中関係は強化されるだろう。一方、中国が軍備を急速に拡大し、アジアの近隣諸国に対する外交政策を積極化すれば、対立に向かうだろう。
他の大国と「偉大な関係」を築き「パートナーシップ」を探る、との選挙公約をトランプ氏が本当に実現できるかどうかで、今後の世界情勢は大きく変わる。
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