オバマ米大統領は10日、大統領選で劇的な勝利を収めたドナルド・トランプ氏とオーバルオフィス(大統領執務室)で会談した。次期大統領は「米国の利益を第一とするが、全ての者を公平に取り扱う」と速やかに公約したが、米国の同盟国の多くはトランプ氏の勝利が米国の政策にどういった意味を持つのかに神経をとがらせている。
トランプ氏は世界を安心させるのに加え、潜在的な危険に満ちた世界で、多くの課題に備えねばならない。
中東では過激派組織「イスラム国(IS)」に対する大攻勢がイラクのモスルとシリアのラッカで進行中だ。アジアでは韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領が辞任圧力にさらされる一方、核をめぐる北朝鮮との緊張が高まっている。欧州では、英国の欧州連合(EU)離脱や移民をめぐる危機に関する懸念が強まっている。
通商政策はどうなる?
同盟国にとって大きな不安定要素の1つは、トランプ氏の通商政策だ。トランプ氏は選挙期間中に、北米自由貿易協定(NAFTA)や環太平洋経済連携協定(TPP)などへの反対を表明してきた。こうした通商合意に対して同氏がどういった姿勢を示すかは不透明だ。
TPPは議会では、もはや死に体なのかもしれないが、参加した米国や日本、オーストラリアなど計12カ国の国内総生産(GDP)合計は、世界全体の約40%を占める。
中国の台頭を受け、共和党員の多くがアジア太平洋地域における米国の影響力強化を望んでいる。TPPが水泡に帰せば、同地域での米国のリーダーシップへの疑念が生じ、同盟国に対するトランプ氏の影響力が潜在的に損なわれる恐れがある。