米FRBがマイナス金利導入を検討すべき理由 次の深刻なリセッション、実はそう遠くない

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結局、最適な取り組みの一つは大幅なマイナス金利政策を導入することだろう。マイナス金利は日欧で早々と実施され、一部では期待を裏切ったとの声もある。しかし、マイナス金利の効果を完全に発揮するすべての政策は、中央銀行だけでは実施できないのだ。

もう一つ、FRBが取り組むべきはインフレ目標を2%から4%へと引き上げることだ。そうすればすべての金利について、下がる余地が2%ほど広がる。実際、FRBに限らず複数の中銀は、インフレ目標の引き上げを検討したことがある。

しかし、この案にはいくつかのリスクがある。第一に、中銀が苦労して得た信頼性が損なわれることだ。中銀の多くは数十年間にわたってインフレ目標を2%に設定している。この水準は長期金融市場に深く織り込まれているのだ。

第2に2008年の金融危機の際にも実証されたが、リセッションの際に利下げする余地は2%では不十分だ。いくつかの推計によると、FRBは当時実施したより4〜5%ほど大きな利下げを行いたかったとみられる。しかし金利がいったんゼロになってしまったため、それ以上の利下げが不可能だったのだ。

またインフレが加速し、価格や税制に歪みが生じる結果、多大なコストが発生する可能性もある。

マイナス金利はもはや過激な策ではない

マイナス金利やインフレ目標引き上げという案は一見、過激に思えるかもしれない。しかし、過激さというのは相対的なものだ。

FRBが効果的な策を講じられなければ、より過激な策が相次いで打ち出される可能性がある。たとえばカリフォルニア大学のバリー・アイケングリーン教授は、FRBがマイナス金利政策を避けたうえでインフレの状況を生み出すならば、保護主義に走ることが有効だと主張している。

もちろん景気刺激に向け、財政政策を講じる余地はある。しかし金融政策が有効に機能しないことを補完するために政府が支出を行うのは、本来は望ましくない。

次の深刻なリセッションが来るまでにマイナス金利政策の下地を整え、インフレ目標を段階的に高めるには、時間的な猶予が不十分かもしれない。しかし代替案がさらに大きな問題を抱えているからこそ、こうした選択肢の導入について真剣に検討を始めるべきなのである。

週刊東洋経済11月19日号

ケネス・ロゴフ ハーバード大学教授

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Kenneth Rogoff

1953年生まれ。1980年マサチューセッツ工科大学で経済学博士号を取得。1999年よりハーバード大学経済学部教授。国際金融分野の権威。2001〜03年にIMFのチーフエコノミストも務めた。チェスの天才としても名を馳せる。

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