金融市場は、FRB(米連邦準備制度理事会)が今後1年間にどの程度まで利上げを行うかを注視している。しかし、これは危険なほど短絡的な視点だ。より懸念すべきは次の深刻なリセッション(景気後退)の際、どこまで金利を下げられるかということだ。
その点からすれば、仮にFRBが政策金利を2017年内に2%まで引き上げても、リセッション再来時の利下げ余地は限られることになる。
FRBのイエレン議長は8月末の講演で、大量の国債購入と金利政策のフォワードガイダンス(政策方針の提示)とを組み合わせれば、政策金利をマイナス6%にまで下げるのと同等の効果が見込めることを示唆し、市場を安心させようとした。
イエレン氏は正しいかもしれない。だがエコノミストの大半は、FRBのこうした型破りな政策手法が効果を発揮するかについて懐疑的だ。
「日銀型の長期シフト」は危険
FRBにはもう一つ考えられる手段がある。日本銀行が最近行ったように、誘導目標を現行の超短期金利から10年物国債金利へと変更することだ。超短期金利がゼロになったとしても、長期金利は依然プラスである。米10年物国債の金利は10月末現在、1.8%近辺で推移している。
ただし、こうした取り組みは差し当たって有効だが、破綻するリスクがある。10年物金利の引き下げを重視しすぎると、膨大な規模の国債購入を迫られる可能性がある。そうすると世界的に金利のバランスが崩れ、米政府が国債を借り換える際の利払い負担も増大することになる。
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