バーナンキ「出口戦略」の真相 髙橋洋一が斬る! FRBとアベノミクスの俗説
バーナンキとしては、こうした経済好転を前提にして、QE3(量的緩和第3弾)から徐々に離れていくことを説明したわけです。実際、バーナンキも「政策変更ではない」と言っており、従来からのFOMCの方針どおりなのですが、市場関係者は「その条件が達成できれば」という部分を飛ばして、「年内に」という部分に反応しました。
結局、先を読みたい人というのは、プロの市場関係者たちだけです。ちょっとでも先を読んで金儲けしたいという人たちは、出口のタイミングが気になって仕方がない。
マスコミは過剰にはやし立てている
出口戦略なんて本当は、一般の人にはほとんど関係のないことなのです。ごく少数の市場関係者の関心事を、マスコミが過剰にはやし立てて書いているだけですね。
もちろん市場参加者がタイミングを知りたがる気持ちはわかりますよ。
でも、そうした人の中には、実体経済の動向よりも目先の金融緩和が継続されるかどうかだけを材料として取引している人も多いのです。そうした目先重視の人は、「年内に金融緩和がなくなる」というところから連想して売り買いするでしょうね。それで、米国株も目先に反応するのは事実です。
バーナンキ自身の「出口」も見え始めている
――FRB議長バーナンキの任期(2期目)は2014年1月に切れますが、その後はどうなりそうでしょうか? バーナンキは明言を避けていますが、続投するとお考えですか?
彼と顔を合わせていた頃の感触から考えると、間違いなく「辞める」と思いますね。
FRB議長の任期は4年ですから、2期務めたということは8年。その前にもFRB理事やCEA(米国大統領経済諮問委員会)の委員長もやっていますから、もう10年以上も政府の役人をやっているわけですね。
何よりも「やれることはすべてやった」という気持ちなのではないでしょうか。
彼が上げた成果は2つ。誰が見てもはっきりしています。
まず第1に、2008年にリーマンショックに見舞われたアメリカが大恐慌に陥るのを防いだ。これが第1期目の業績です。
そして第2に、2010年から「インフレ目標」という世界標準の金融政策をアメリカに導入して、アメリカ経済をしっかりと成長軌道に乗せた。これが第2期目の業績。
――だとすると、後は役人を辞めて、研究生活に戻りたい?
リーマンショックさえなければ、もっと早くインフレ目標を導入して、最初の任期で辞めていたのではないかと思うくらいですよ。