バーナンキ「出口戦略」の真相 髙橋洋一が斬る! FRBとアベノミクスの俗説
私がプリンストン大学にいた頃、バーナンキは同大学の経済学部長だったのですが、彼は日頃から学生たちに向かって「くだらない政府の役人なんかに絶対なるなよ」と言っていましたから。
「ヨーイチ、きちんと勉強してしっかりした学者になれ」と私も言われました。私が日本政府から来た官僚だということもわかったうえでね(笑)。
ですから、彼がFRBの理事になったときは本当に驚きました。あれだけ「政府の役人になんてなるなよ」と言っていた当の本人が、いきなり役人になりましたからね。
基本的には学者で教育者
基本的には学者肌の人です。しかも教育者としても丁寧で立派な人でしたね。
同じ時期にプリンストンにやってきたポール・クルーグマン(のちのノーベル経済学賞受賞者)とは好対照でした。彼は授業の準備はしてこないし、休講も非常に多かった。有名人ということで最初は学生たちが教室に押しかけましたが、学期の終わり頃には受講生がほとんどいなくなっていました。
それに引き換え、バーナンキはきちんとした時間に授業を始めて、質問には丁寧に答えるし、準備もきちんとしているし。
そういう学者タイプの人が、FRBという組織を運営し、FOMCのメンバーともやり合わなければならないというのは、けっこうフラストレーションがたまるのではないかなと思います。
当時、彼と話をしていたときの感覚からすれば、この地位にずっと固執していたいというタイプの人じゃないですよ。むしろ、「学問を極めろ」って言っていたのに、どうしてFRB議長になったのか逆に聞いてみたいくらいです(笑)。
――後任の話も出ていますね。現FRB副議長のジャネット・イエレンの名前が挙がったりもしています。後任人事についてはいかがお考えですか?
イエレンは可能性があると思いますし、彼女は私もいいと思いますね。ただし、バーナンキよりもっとハト派(金融緩和推進派)のイメージです。
「元気のいい超強気のおばさん」という感じで、やさしい性格のバーナンキとは対照的なキャラクターですから、彼女が「初の女性FRB議長」になってFRBがどうなるかは、とても興味がありますね。
とはいえ、後任人事についてはまったく読めません。バーナンキが議長になった当時も、事前の下馬評には彼の名前は挙がっていませんでした。「バーナンキ議長」が誕生したときは、ウォールストリートは不意打ちを食らって、みんなびっくりしたんですよ。