バーナンキ「出口戦略」の真相 髙橋洋一が斬る! FRBとアベノミクスの俗説
出口がいつか、それはバーナンキにだってわかってない
――5月の雇用統計では、アメリカの失業率は7.6%でした。しかも今回の記者会見でバーナンキは「(6.5%すらも)あくまで目安であり、われわれの真の目標は完全雇用だ」と答えていますね。
「失業率が6.5%以下に下がるまでは緩和を続ける」と明言しているわけですから、出口はまだ当分ないですよ。それがいつになるのかなんて、バーナンキだってわかっていないでしょう。
実際の経済政策を進めるときは、出口戦略を先に決めたりはしません。とにかく目標を決めて、そこに至るまでは何度も執拗にやる。
そこで確かなのは、バーナンキはインフレ率と失業率を見ていて、それらがターゲットに入ったときに初めて緩和策をやめるということです。
「やめる」と言っても、一気に金融を引き締めるのではなく、そのターゲットの中に維持できるように、アクセルの踏み方を調整するというイメージですね。
リーマンショック後にやったQE1(量的緩和第1弾)で、しっかりとアメリカの景気が回復していれば、そこでもうやめていたはずです。にもかかわらず、QE2、QE3と続けているということは、実は2回ほど彼の思惑は外れてきたということ。
ですから今回だって、出口がいつになるかなんて、バーナンキもわかっていないのです。
金融緩和は目的ではなく手段です。金融緩和の真の目的は、アメリカ経済をよくすることなのですから、「本当ならQE1で終わって出口に進めればよかった」というのがバーナンキの偽らざる思いでしょう。
――にもかかわらず、ここまで「出口のタイミング」が取りざたされるのはなぜなのでしょうか?
19日のバーナンキ発言は市場関係者にはちょっとしたサプライズでしたね。「もし今後の米経済指標が年率2%のインフレ目標などと整合的であれば、FOMCは現時点で『年内に』(later this year)証券購入ペースを緩やかにするのが適切だと考えている」との発言です。
FOMCが同時に発表した経済予測では、来年の失業率は6.5~6.8%まで低下し、来年のインフレ率は1.4~2.0%の上昇、来年の実質経済成長率は3.0~3.5%増と強気な見方になっています。