――「朝生」が論客同士が戦う討論番組としたら、「ニッポンのジレンマ」はそれと少し違う印象を受けます。どのような考えで番組を始めたのでしょうか。
今は「何が白で何が黒か」が言いきれない時代です。たとえば、2010年からNHKEテレで放送されたマイケル・サンデル教授の「ハーバード白熱教室」で語られたように、みんなよかれと思って正義を主張していても、そこに客観的な正解があるわけではない、そもそも「正義とは何か」を誰かが定義できるわけではない。前に進むも後ろに下がるのも、必ずそこに「ジレンマ」がある。こうした時代の中で、むしろそのもやもやしたジレンマのようなものを「共有する」場所があったらどうなんだろうか――。
何をテーマに話しても出てきてしまう「ジレンマ」をキーワードにして、まずは若い世代に開かれた場を作って議論をしてもらうという実験的な精神で進めました。
――そういう意味では「戦う」ではなく「共有すること」を目指している。
「朝生」は好きな番組ですが、田原さん自身がもともとテレビディレクター出身ですから、意図的にテレビのわかりやすさを出している。そういうスタイルもあっていいですが、こちらは1970年以降生まれの同世代が、フランクな仲間だからこそ語り出すような空気を大事にしたい。そして対話を通して、「ここまではわかる」「ここからが違う」ということをお互いが認識すること。ここまでは「共有できる」ということが確認できれば、違いはかえって尊重し合えるのではないかと思っています。「朝生」が好きな方には物足りないかもしれませんが、それがこの世代の特徴ではないかと思っています。
「お茶の間」ではなく「知らない人とカフェで」楽しむ
――なぜ、1970年以降生まれにしたのですか。
もともと、もっと若い世代の論客に登場してもらう番組があってもいいのではと話していました。その中で、1970年以降生まれが、バブル崩壊以降に社会に出ることになった「ロストジェネレーション」世代であること。また、1970年は、大阪万博や三島由紀夫の自決といった、戦後の高度経済成長を突っ走ってきた流れが一息ついたように見えた。だから実験として、そこで線を引いてみようと考えました。その後、1985年以降生まれでスピンオフ企画も行いましたし、これから変わっていくかもしれません。
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