前出の1―3の中で、トランプ氏にとって一番の難題は、「2)国際社会とのつながり重視」の姿勢を示すことだ。NAFTA(北米自由貿易協定)やTPP(環太平洋パートナーシップ協定)の否定、高率の輸入関税導入などの過激発言を繰り返して米国民の歓心を買ってきただけに、大統領になった途端に現実路線に戻ると、熱狂的な支持者から反発を受けることになる。
日本株に大きな影響を及ぼすのは、トランプ氏の為替・金融政策についての発言だ。トランプ氏は、ドル高が米国の製造業を苦しめていると、繰り返し発言してきた。日本を「為替操作(円安誘導)国」と非難し、円高(ドル安)が進むきっかけを作った経緯がある。
ドル高につながる米利上げにも反対する姿勢をとってきた。昨年12月に利上げを行った米FRB(米連邦準備理事会)のイエレン議長を批判し、「大統領になったらイエレンは(議長に)再任しない」と発言している。
米景気はゆるやかに回復に向かっており、12月には再利上げの可能性が高まっていると考えられていた。ただし、米利上げは、もはや重大な政治問題となっている。トランプ氏が大統領に当選したため、12月の利上げは難しくなったと考えられる。
日本株の円高リスクはどこまであるのか
トランプ氏がこれから米利上げに否定的な発言を繰り返すと、世界の株式市場にはプラスに働くが、円高(ドル安)につながりやすいため、日本株には逆風となる。トランプ氏の発言次第では、再び円高が進むリスクもある。
トランプ氏がどのような経済政策を打ち出すか、世界が注目している。これまで通り、反資本主義・反グローバル主義の過激発言を続けると、円高・株安が続くことになる。ただし、自身が不動産王と言われる経営者でもあるトランプ氏が、ただ資本主義を破壊するだけの発言を繰り返すとは考えられない。
インフラ再建のための財政出動や減税によって、米景気を強くする政策にも力を入れると思われる。共和党主流派を巻き込んで、「強いアメリカ経済を復活させる」ことに、かなりのエネルギーを注ぐと予想される。
日本株にとって、トランプ氏の保護貿易発言は逆風となるが、米景気を強化する経済政策は追い風となる。プラスマイナス両面を考え合わせ、また、日本の企業業績に底打ちの兆しが出ていることも考慮すると、筆者はトランプ大統領への恐怖が収まり、米景気の回復色が強まる見通しがたてば、日経平均は再度、上値を目指すと考えている。その可能性がどれくらいあるか、ここからトランプ氏の政策を慎重に見極めていく必要がある。
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