「ヒラリー勝利」の前提で忘れられていること 「もしトラ」「もしクリ」どっちのリスクが大?
「史上最悪」といわれた米国大統領選挙。まもなく新大統領が決まるわけだが、執筆時点(11月8日)ではヒラリー・クリントン候補が優勢といわれている。だが、金融市場は完全に落ち着いたとはいえない状態だ。
米大統領選の状況は、英国のEU離脱決定直前とは違う
「クリントン大統領誕生」を織り込みに行っていた市場に冷水を浴びせたのが、同氏の私的メール問題だった。いったん勝負があったはずの醜い戦いが、再び土俵中央まで戻されたことで、市場では「もしトラ」リスク(もしもトランプ氏が大統領になった場合のリスク)が強く意識されることになった。
その結果、米国株式市場では代表的株価指数であるS&P500が1980年以来36年ぶりの9日連続下落を記録。FBI(米連邦捜査局)が訴追しないことを決めたことから7日の米国市場は急反発したものの、なお不安定な動きが続く。もしトランプ大統領が誕生したら、金融市場は6月の英国EU離脱ショックと同様、大きなショックに見舞われるという見方も根強い。
しかし、こうした見方は市場の動きを無視したものだといえる。政治的イベントに向けての市場の動きという点においては、英国国民投票の時と今回の大統領選挙は若干異なっているからだ。
6月の英国の国民投票を思い出して欲しい。この時は、離脱派優勢と見られていた中で起きた残留派の女性下院議員射殺事件によって、世論が一気に残留に傾いたと思われた。その中で、国民投票を迎えた。
これに対して今回の大統領選挙は、いったんクリントン大統領誕生で決まったかに思われた後、大統領選の直前に、「もしトラ」リスクが台頭した。
つまり、英国国民投票の際には市場は「ガードを下げる」なかで政治的イベントを迎えたのに対して、今回の大統領選挙はFBIの訴追なしが決まったとはいえ、全体としては「ガードを上げる」中で迎えているという違いがある。
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