しょぼい水族館が流行る“当たり前の"理由 イケメン飼育員が語る水族館の心得

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人気の秘訣は?

――お客さんが増加に転じた起爆剤はありますか。

古くなったドーナツ型の水槽を取り壊して、新たに作った「さわりんぷーる」でしょう。以前からお客さんの「生き物に触りたい!」という要望はありました。一方で、魚マニアの僕たち飼育員は大きな水槽を作りたい。どちらを採用するかといえば、お客さんの意見に決まっています。

このプールは子どもたちに大人気。入り浸りになるので、同伴の大人が疲れてしまうぐらいです。だから、標本などを展示していた部屋を改装して「まったりうむ」を作りました。薄暗い空間でキレイなサンゴを眺めながらのんびりできます。

――「パクパクおさかなプール」もいいですね。エサの値段が2種類あるのも面白い。

100円と300円では魚の食いつきが違いますよ。お母さんに連れられてきた子どもは兄弟で100円のエサを分け合ったりしていますが、おばあちゃんに連れて来てもらうと300円のエサがあげられる(笑)。

このプールも「魚や亀にエサをあげてみたい。どんな風に食べるのか見たい」というお客さんの要望に沿って実現しました。こちらも人気で売れ行き好調です。エサ代を賄うどころか黒字になっています。ただし、エサのあげすぎは魚によくないので、一定量のエサがなくなったら販売は終了です。

――もっと大きな水族館に移りたい、という気持ちはもうありませんか。

ないですね。この水族館をもっと楽しくすることばかりを考えています。アットホームさで勝負するならば、施設の大小は関係なくなります。むしろ、広すぎる水族館は歩き回るのに疲れるし、子どもを放っておけないし、入館料は高い。うちは子どもを野放しにできるし、気楽でお安いですよ、とアピールしていきたいですね。

大人気の「さわりんぷーる」。現在はタカアシガニやナヌカザメなど深海生物を展示中

「おカネではない給料がもらえる」という表現が耳に残った。書き言葉にすると陳腐だけれど、地元の水族館で奮闘する小林さんの口から聞くと「そうだよなあ」とうなずいてしまう。好きで得意な仕事で目の前の客に喜んでもらえるのは、おカネ以上の報酬なのだろう。生活に困らないだけのおカネさえもらえれば、どこかのグローバル企業が大好きな成果主義は小林さんには必要ない。

それだけに客の数と反応は重要だ。無数のレジャー施設の中でどう差別化するのか。

客との距離の近さを売りにするならば、規模が小さいことはむしろ利点になる、という小林さんの指摘は鋭い。大きな組織では人事異動が不可欠だし、目の前の客は「自分のお客さん」なのだという意識は薄れがちになってしまう。小さな水族館で飼育員が5人しかいなければ、客からも顔と名前を覚えられやすい。その強みを生かさない手はないのだ。

大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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