――小林さんはどちらのご出身なのですか。
地元、蒲郡です。海陽学園(トヨタ、JR東海、中部電力が出資して設立した全寮制エリート養成校)があるところは子どもの頃はいい干潟で、あさりやカニを採っていました。
僕は海や川で遊ぶのが大好きで、保育園児の頃からずっと水族館の飼育員になりたかった。父方も母方も祖父が漁師だというのも影響しているかもしれません。
大学は北里大学水産学部(現・海洋生命科学部)です。(東日本大震災で)被災する前は岩手県大船渡市に学部がありました。最寄りの映画館にも車で2時間以上かかるという、蒲郡以上に自然豊かな環境だったので、海や川で遊んでばかりいましたね。海に潜ってウミタナゴを銛(もり)で突いたり、ソイ(カサゴ科)やイワナを釣ったり……。
水族館職員に必要なスキルとは?
――就職活動をしたのは水族館のみだったのですか。
はい。募集が少ないので、入れてくれるのなら外国の水族館でも行くつもりでした。地元の竹島水族館に入ったのはたまたまです。
大学3年生のとき、当時は鳥羽水族館(三重県鳥羽市)に勤務していた中村元さんに手紙を書いて会いに行きました。現在はフリーの水族館プロデューサーとして活躍している方です。「生き物を飼うのが小さい頃から大好きだから飼育員になりたい」と伝えたら、「そんな考えはよくないよ」と言われました。魚を上手に飼えたとしても、その魅力を人に伝えることができなかったら飼育員として失格だと。
そういう考え方もあるんだ、と驚きました。飼育員は魚マニアの集まりなので、魚の研究をしていれば幸せなのです。水族館には博物館としての位置づけもあるので、飼って繁殖させて研究することに関心が行きがちで、館内(観覧エリア)に出たがらない。お客さんには「水槽を勝手に見てくれ」という姿勢。中村さんに「それは間違っている」と言われたことが、僕にとってはターニングポイントでした。
――小林さんも学芸員ですよね。魚マニアではないのですか。
魚は好きです。ただし、こんなことを言うとしかられるかもしれませんが、お客さん不在の研究には興味がありません。魚の生態研究は大学や水産試験場に任せておけばいい。水族館の役割は「いかにお客さんに感動してもらうか」に尽きると思うのです。
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