その後、長年にわたる経済の停滞と危機の時代が訪れ、保守的な政治機運が育まれていく。1980年に共和党のロナルド・レーガンが大統領に選ばれると、レーガン政権は社会保障費の削減に狙いを定め、富裕層への減税を実施し、各産業と金融機関への規制緩和を始めたのだ。こうして、アメリカの第2次「金ぴか時代」が始まった。
大学1年生の8割が挙げた人生の第一目標は…
そして、今世紀の最初の10年間、中間層の実質所得は下がり、上位1%の富裕層が下位90%より多くの富を支配するようになった。ちなみに、2014年に世界で最も裕福な500人が持っていた資産は4兆4000億ドル。この額は、インド(人口12億人)とブラジル(同2億人)の1年間の経済活動の合計金額を上回っている。
民間調査団体ピュー・リサーチ・センターが2006年に行った調査によれば、この新たな「金ぴか時代」において、大学1年生の81%が「人生の第一の目標は金持ちになることだ」と考えている。1960年代の約2倍だ。また、同年の調査では、半数以上が、人生の大きな目標の一つは有名になることだとも答えている。一方、「困っている人を助けたい」という回答者は3分の1に満たなかった。
トランプは自家用ヘリや自家用ジェットであちこち飛び回り、政治からセックスまで何にでも意見を言い、自分はあらゆることに優れた人間なのだと、いつも声高らかに語る。カネと名声の両方を手に入れた者は、ただの金持ちよりずっと注目される。そして、彼ほどの規模でカネと名声の両方を手に入れた者はほかにいないのだ。
トランプは成人後の人生を通じて不動産事業を営んできたが、ほかにも、スポーツから美人コンテストに至るまで、あらゆることに手を出した。こうした興味のすべてに共通する要素が、「メディアに露出する価値」だった。名声こそが力となることや、記者たちがしばしばインタビュー内容の「裏取り」を怠ること、そしてイメージが現実を凌駕できることを熟知していたドナルドは、それを利用してメディアに取り上げられようとしてきた。
実際のところ彼は、行き過ぎな面が多々あったとしても、その時代、その時代に完全に適応しながら生きてきた。そして、前述のテレビ番組『アプレンティス』への出演により、トランプの長い職務経歴書に「テレビ・スター」という肩書きが加わる。こうして、若い世代にもドナルド・トランプの名が広まった。
それ以後、メディアはしばしば、カネや富、贅沢さを象徴する「記号」としてドナルド・トランプを使い始めた。また、「トランプ」という単語は、ためらうことなく成功するという意味や、節操なく自分を売り込むという意味にもなった。アメリカでは「ドナルド・トランプ的な」という表現もよく使われるが、これは褒め言葉であると同時に、嫌味でもあるのだ。
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