11月8日に投票日を迎える米大統領選の戦況が再び読みづらくなってきた。10月28日に、連邦捜査局(FBI)がヒラリー・クリントン氏の「メール問題」について捜査を再開すると発表し、30日には裁判所の令状を取得。これを受け、11月1日に発表されたワシントン・ポスト紙とABCニュースによる共同世論調査では、ドナルド・トランプ氏の支持率が46%とクリントン氏を1%上回り、逆転した。
捜査の状況や今後の行方は不透明だが、米ウォール・ストリートジャーナル紙とNBCニュースが同じ30日に発表した世論調査では、激戦区のひとつ、ノースカロライナ州ではクリントン氏が6%リードしているものの、2000年の大統領選で混乱に陥ったフロリダ州でのリードはわずか1%にまで縮まっている。
「メール事件」捜査再開を受けてトランプ氏は、今回の捜査規模は1974年のウォーターゲート事件以上であり、「クリントン氏の腐敗の証拠」と攻撃を強めている。
記者団もあきれたトランプの演説
が、そのトランプ氏も相変わらず乱暴な選挙戦を展開している。10月下旬にペンシルベニア州で行った演説では当初、「大統領就任後最初100日間の目標」について語る予定だったが、結局はクリントン陣営や、トランプ氏に性的嫌がらせを受けたと訴えている女性たちについて、「米国人の精神を毒そうと企てている」という考えを披露するのに時間を費やした。
政策の話を聞くつもりで集まった記者団一同は愕然。政治専門サイト、ロールコールのコラムニスト、ジョナサン・アレン氏はツイッターで「トランプの演説は、自分が今にも引き起こしそうな失敗の責任をみんなに押しつけているようなものだ」とつぶやいた。また、ハフィントン・ポストの政治担当記者、ローラ・バゼット氏もツイッターで、「トランプは大統領就任後の100日間、基本的に彼の行為を非難した女性たちに対する個人的な復讐をして回るのでしょうね」と記した。
トランプ氏の「女性蔑視発言」の傷は深く、共和党の女性議員の多くは女性有権者の信頼回復に頭を悩ませている。ジョージ・W・ブッシュ前大統領およびジョン・マケイン上院議員の側近で、現在はMSNBCの政治アナリストを務めるニコール・ウォーレス氏は、「トランプはミソジニー(女嫌い)を表明していて、女性有権者たちはそのことに愕然としている」と話す。
世論調査にも、女性有権者の反感が如実に表れている。ABCニュースが10月23日に発表した世論調査によると、クリントン氏とトランプ氏の女性支持率はそれぞれ55%と35%と、20ポイントも差があった。大学教育を受けた女性に至っては、62%と30%とさらに開きが大きかった。これはメール捜査再開以前に行われた調査ではあるが、女性蔑視発言の影響を考えると数字が大きく変わることはないだろう。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら