さて、下院については、共和党が引き続き過半を占めることが予想される。ほとんどの政治アナリストは、民主党が10~15議席増やすものの、246対186議席で共和党が優位に立つことは変わらないと予測されている。
下院で問題になるのは、共和党幹部会のバランスだろう。とりわけ、ポール・ライアン下院議長が、トランプ氏の熱狂的支援者から出てくることが予想される指導力に対する批判を乗り切れるかどうかが注目される。トランプ氏はすでに、選挙戦中も公然とトランプ氏を批判してきたライアン氏への報復を叫んでおり、一部の共和党員から支持を得ている。
「今回の大統領選は、共和党にとってとてもやっかいなものになるだろう」とロール・コールのボブ・キューザック編集長は、「特にライアン下院議長が選挙後、自分を追放しようとする動きを鎮めるのは難しいのではないか」と話す。ただ、有力政治ニュースサイト、ポリティコでシニアライターを務めるジェイク・シャーマンによると、「ライアン下院議長が自ら今のポジションを求めたことはない。この職を去ることは残念かもしれないが、これによって彼のキャリアに傷がつくことはない」という。
共和党が突入する「闇の時代」
一方、ライアン下院議長の後継者を探すプロセスは長きにわたると予想され、共和党内で泥沼の争いが起こることが予想される。最も注目されるのは、トランプ氏を代弁者とする現体制に不満を抱く有権者たちが、今後、誰を支持するか、である。現在の共和党は不協和音の漂う2つの派閥の寄せ集めだ。
ひとつは移民、国際貿易、大企業、大きな政府に反対するポピュリスト派閥、もうひとつは国際貿易協定、富裕層への課税の軽減、適度な移民制度改革、バランスのとれた予算、ソーシャルセーフティネットの縮小、トリクルダウンを前提とした経済政策アプローチなどに好意的なカントリークラブにいるようなエリート主義者である。
長年にわたって、共和党は拡大するポピュリスト派閥を選挙時の「道具」として使っていて、本当の課題を無視してきたことには罪悪感さえ抱いていない様子だった。ところが、党内で膨れ上がった矛盾はついに予備選のときに爆発し、結果としてトランプ候補が誕生してしまった。
選挙後、共和党内のポピュリスト派閥は宙に浮いた存在となりそうだ。それは共和党に限らず、米国内でも同じで、トランプを支持したポピュリストたちの深い悲しみを、将来的な希望に変えられる政策を示すことに成功した政党が、長期的には米国の舵取りを任されることになるのではないだろうか。
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