FRBのQE3縮小策次第で、新興市場に大波乱も 反動招きやすい日米の金融政策、市場との対話も難しく
安倍政権の成長戦略は、部分的には前進も見られるのだが、海外投資家の失望は極めて大きかった。
そういう局面に、FRBの“QE3”(月850億ドルもの大規模資産購入策)の縮小開始観測をきっかけとした米長期金利上昇と、それに伴うエマージング市場からの急激な資金流出のショックが重なってきたのが、最近の金融市場の変化と考えられる。米債券市場やエマージング市場で痛手を被ったファンドが、利益を確定しようと日本株を売却し、その不安定さがアジアの株式市場にまた波及するというスパイラルも見られた。
ジム・ロジャーズ曰く「アベは長期では大惨事をもたらす」
一方、欧州の当局関係者や堅実な資金運用を行う人々の間では、日本の金融政策を冷ややかに見る目がある。
欧州の現時点の最大の問題は高い失業率で、特に若年層(25歳未満)は深刻である。ユーロ圏では4人に1人、英国でも20%を超える失業率となっている。一方、日本は6%台だ。欧州から見ればそれは羨望の低さである。また、日本はデフレだといっても実際はおおよそ横ばいと言っても差支えない程度の極めて緩やかな物価下落である。それゆえ、彼らは「日本はなぜギャンブルのような金融緩和策を行うのか?」と不思議がっていた。
米国でもこのところ、日本の構造的な問題に冷静に目を向ける見解が増え始めている。
大物投資家のジム・ロジャーズは最近のインタビューで、「日本はとても深刻な問題を抱えている。巨大な債務、酷い人口動態。彼らは外国人を入れたがらないので、人口は減少し続けている。安倍氏は通貨価値を損ねるつもりだと言っている。長期的にそれは大惨事になる。短期的にも機能するとは保証できない」と語った(Fusion Market Site)。
安倍首相で表紙を飾ったブルームバーグ・ビジネスウィーク誌(6月10~16日号)も、急激な人口減少により世界経済におけるシェアが低下していく日本が1970年代、80年代のような時代に戻ることは困難であり、スイスのような豊かな小国を目指すことが安倍首相とそのチームの現実的な課題ではないか、という指摘を行っていた。身の丈に合った戦略を描くべきという趣旨である。
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