長期金利上昇で、打ち消される経済活性効果

「期待が変われば、実体経済が変わる」は誤り

長期金利が高騰している。10年国債の利回りは、5月15日に一時0.92%になった。その後低下したが、再び上昇し、5月23日には一時1%まで達した。

新金融政策発表前の4月3日には0.56%だった。市中保有国債の平均残存期間である7.0年(2012年3月末)をデュレーション(平均回収期間)とみて、この金利上昇率での国債価格の下落率を計算すると、2.0%となる。12年度末の国債発行残高は約823兆円で、16.5兆円ほどの評価損が発生したことになる。これは、昨年秋以降の上場企業時価総額の増加約150兆円の1割を超える。決して無視しえぬ額だ。

政府高官は、「株が上がるから、国債を保有していた銀行が国債を売って株式投資に回しているのだ」と説明している。しかし、そんなことが起きているとすれば大変だ。バブルを起こしている株式と競合しうる高い利回りを約束しないかぎり、国債は売れなくなるからだ。そうなれば、政府は現在のような低利での資金調達ができなくなる。これは、日本財政の破綻宣言と同じである。このような発言が飛び出してくるほど、日本の金融市場は混乱している。

現在起きていることから最低限言えるのは、金融緩和にもかかわらず、将来の長期金利が上昇する(国債価格が下落する)との見通しが一般的になっていることだ。

では、なぜ長期金利上昇を予測するのか? それは、インフレ率の上昇が予測されているからだ。仮に、日本銀行が言うように、2年後の消費者物価上昇率が2%になるとすれば、長期金利もそれに見合って上昇する。物価上昇率が2%になったとき、1%より低い利回りで資金を調達できるはずはないのである。

黒田東彦総裁は、5月22日の記者会見で、長期金利高騰容認とも受け取れる発言をした。それも当然のことで、無理やり抑え込むのは、インフレ目標を否定してしまうことになるからだ。

物価上昇がどのようなメカニズムを通じて実現するかは依然として不明なのだが、日銀が自信をもって「2年以内に必ず実現する」と言っている以上、マーケットとしては無視するわけにはいかない。

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