長期金利上昇で、打ち消される経済活性効果

「期待が変われば、実体経済が変わる」は誤り

財政の信頼が失われると実質金利が上がる

設備投資に影響を与えるのは、実質金利だ(設備投資に限らず、現在と将来の間の資源配分を決めるのは実質金利である)。したがって、物価上昇に受動的に反応して名目金利が上がっているだけなら、実質金利が上昇しているわけではないので、投資には悪影響が及ばない(すでに述べたように、インフレ期待の上昇は投資を増やさないが、かといって減らすこともない。インフレ期待の変化は、投資活動に中立的である)。

ただし、物価上昇が生じなければ、結果的に実質金利が上昇したことになる(そうなる可能性も高い)。それは、設備投資や住宅投資に抑制的な影響を与える。

また、財政再建目標に疑問符が付いた場合にも、実質金利に影響が及ぶ可能性がある。名目金利が上昇すれば、政府の利払いは増える。これは、財政収支にかなり深刻な問題を与える。

政府が掲げている財政再建目標は基礎収支(プライマリーバランス)に関するもので、国債利払いは含まれていないが、財政の維持に利払いは不可欠だ。イタリアでは、基礎収支が黒字にもかかわらず国債金利が高騰した。それは、政府債務残高が大きく、利払い費が巨額だからだ。

日本で国債費の増大が起きれば、11~12年にイタリアで起きたような事態が再現されるだろう。日本国債の信用度が失われて金利が高騰し、外国人投資家が逃げ出す。資金が日本から流出して急激な円安が進む。銀行など日本の投資家も、国債を売却する。その売却資金は日本株でなく、外国通貨建ての資産に回る。

イタリアの場合には、投資資金が逃げ出しても、自国通貨の減価という事態には見舞われなかった。それは、ユーロという共通通貨に守られているからだ。しかし、日本にはそうした防壁がない。

日銀が2%という高いインフレ目標を採用したことで、パンドラの箱が開かれてしまった。長期金利の上昇は、箱から飛び出した最初の災いだ。これと連動して、これまでは顕在化しなかったさまざまな問題が生じる危険がある。長期金利高騰の重大性を過小評価してはならない。

週刊東洋経済2013年6月8日

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