営業ってそんなに格好悪いですか? 奴隷にならないための営業の論理

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つねに不満がなければならない

それでは職種としての営業とはどんなものでしょうか。

営業にはつねに相反する2つの響きがあります。提案する営業と御用聞きする営業、買いたくさせる営業と買っていただく営業、自信にあふれた営業と卑屈な営業……。

冒頭にあった、「やりたくない営業」というのは、「ひたすら卑屈に御用聞きに努め、表面的なお客様至上主義の関係の中で奴隷のように尽くして、ご慈悲とともに買っていただく」仕事というのをイメージしているのだと思います(ちょっと極端かもしれませんが、冒頭の私の就職活動の頃のイメージはそうでした)。

営業のやり方は、商品特性や相手との関係によって、その時々によって異なるので、そういう営業が存在することは否定しませんが、少なくともそういう迫害で始まり支配で終わるような営業というのは、世の中にある営業職のうちの一部ではないかと思います。

ちなみにそういうある種不条理な経験が、キャリア構築上まったく役に立たないものかというと、そういうわけでもありません(ないに越したことはありませんが……)。自分もこれまでの仕事の中で、営業に行って不条理な思いをしたことは何度もあります。

まったく別の仕事で行ったにもかかわらず、その会社のケーブルの接触がたまたま悪く床にはって机の下の配線を何十分もかけて付け替えさせられたり、訳のわからないまま買い出しに走らされたり、接待で飲めない酒を無理やりに飲ませられ、そこで動揺したりぐったりする自分を酒のさかなにされたり……。私の経験など不条理といってもかわいいものだと思いますが、人生のひと時にそういう無力感を味わったり、相手によって態度を変える人の底の浅さを知るということは、とても勉強にもなります。

世の中のほとんどは不条理でできています。そんなことは頭ではなく体で覚えないとなかなか自覚できません。

「自らが行うことについては、つねに不満がなければならず、つねによりよく行おうとする欲求がなければならない」。ドラッカーの言葉です。

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