さて、話を戻しますが、逆にいえば、世の中の多くの営業は程度の差こそあれ、提案する要素、交渉する要素といった前向きな響きを備えていると思います。同時にこれらはとても論理性が求められる仕事でもあります。
営業を分解すると「どこを攻めるか」という要素、そして「どう攻めるか」という要素からなりますが、それぞれを少し具体的にみていきます。
まず「どこを攻めるか」です。
顧客訪問にあたり、とりあえず行ってみるとか動いてみるというのは、度胸が試される名刺交換研修ではいいですが、実務でそれをやり始めると御用聞きのわなにはまります。
なぜなら考えなしで始めると、行けるところに行こうとします。当たり前です。しかし考えてみればすぐわかるように、すぐ思いつく行けるところというのはすでに関係ができている営業先です。そういう営業先は感謝しつつもしばらく寝かせておくべきで、むしろ関係ができていないがポテンシャル(規模が大きいとか、最近、進出してきたとか)のある営業先にこそ行くべきです。
つまり「行ける」営業先と「行くべき」営業先を明確に区別し、そのうえで「行くべき」営業先を優先的に回る必要があります。
現状は驚くほど当たり前になっていない
そして次に「どう攻めるか」です。
基本的に買い手と売り手の利害は一致しません。なぜなら売り手はなるべく高く売りたいと思い、買い手はなるべく安く買いたいと思うからです。一見、当たり前です。しかし本当でしょうか。われわれはそういう常識を疑い、その枠組みから抜け、奴隷的営業にはまらないようにしなくてはいけません。
では、そんな枠組みからどう抜ければいいのか。すべてとは言いませんが、その方法は確かに存在します。
たとえばあるメーカーのバスは高価ですが、好調な売れ行きを誇ります。よい製品は高く売れるというのは当然のことですが、ここで注目したいのは、顧客の購入メカニズムです。そのバスは燃費効率がよく、車体のちょっとした工夫で腐食しにくい作りになっています(その分高価です)。
顧客は、そのバスの購入により、燃費と腐食修理のための修繕費が大きく削減されます。結果として高くバスを買っても、それを吸収できるほどのコスト削減ができることになります。顧客と自社との間で、WinWinが成立したことになります(その分、別の業者にしわ寄せがいくことになりますが)。
あるいは典型的なコモディティであるバス運賃もそうです。ライバルのバス会社を意識し割引して価格競争しても、等しく貧しくなるだけです。お客様にとっての交通手段を考えると、ライバルはバス会社だけではありません。ライバルは誰なのか。お客様は本当に価格の安さ「だけ」を求めているのか。お客様がどういう枠組みでモノを考えているかに、想像を巡らせる必要があります。こんな話は、外から見ると当たり前に見えるかもしれませんが、現状は驚くほど当たり前になっていません。
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