やがて、トンネル内にL0系のレッドランプの光が見え、8分という長い時間をかけながら、5両編成のL0系がようやく姿を現した。L0系はゆっくりと報道陣の前を通り過ぎ、反対側のトンネルに入った後、今度はバックして報道陣が撮影しやすい場所に停車した。L0系の外観はそれまで走行試験に使用されていた「MLX01-901A」を踏襲している。全長15メートルの長い先頭部分はそのままで、大きな違いは感じられない。車内の居住空間を広くするため、車両の断面を四角形にしたという説明があったが、901Aの断面も四角形に近い形状だったと思う。
今回はサプライズはなし……
L0系をバックにJR東海の遠藤泰和・執行役員山梨実験センター所長のインタビューが始まった。「本日は大きな第一歩」と、遠藤氏は高揚した表情で語った。
インタビュー終了後、報道陣の中から「今日時速500キロメートルで走るかと思った」「車内を見せてくれればよかったのに」といったつぶやきが聞こえた。むろんJR東海は報道公開の案内文でも今回は低速運行であることを明記しており、車内を見せるとは一言も書いていない。予定どおりの進行だったはずなのだが、これまでの試験車両と劇的な変化がなく高速走行もしないリニア車両に“サプライズ”は感じられず、その一方での「大きな第一歩」という発言に、私自身もギャップも感じた。
なぜそう感じたのか。会社への帰路、考えているうちに少しずつ答えが見えてきた。
私がリニアモーターカーという名前を初めて耳にしたのは、幼稚園か小学校低学年の頃だ。車輪を使わず、浮上して新幹線の2倍以上のスピードで走る未来の超特急だった。
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