「卵子老化」と戦う、アラフォーの現実は? 急増しているアラフォー世代の妊活事情をレポート

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現在、不妊治療には、大きく一般不妊治療と高度生殖医療(ART)の2種類がある。

一般不妊治療の第1ステップが、最も妊娠しやすい排卵日を予測しセックスする、タイミング療法。それでも妊娠しない場合、精子を直接子宮に注入する人工授精のステップへと進む。通常はこれらの段階で2年ぐらいをかける人が多いが、アラフォー世代では時間との戦いを意識せざるをえないため、早めにARTの体外受精や顕微授精へとステップアップしていく例が多い。

ARTの流れはこうだ。卵巣に針を刺して卵を採取し、体外で卵と精子を受精させる。受精を確認できたら、卵の分割を待って、子宮内に受精卵を戻す。受精の方法で、シャーレの中で精子をふりかけて自然に受精を待つのが「体外受精(IVF)」。その次のステップとして、採取した卵子に細いガラス管で直接精子を注入して受精させる治療を「顕微授精」と呼ぶ。

治療に1000万円かけるケースも

治療費の目安は、体外受精や顕微授精などのARTになると医療機関による差も大きく、1回20万~30万円でできる施設もあれば、60万円以上かかるという施設もある。中には1回のARTで子どもを授かる幸運な女性もいるが、これらのステップを複数回繰り返すケースも多い。その結果、トータルで100万円以上の治療費を支払ったり、極端な場合は1000万円近い治療費をかける女性もいる。

高額なARTの治療に対しては、自治体の助成金を利用する方法もある。東京都の場合、夫婦合算の所得額が730万円未満であれば、1回上限15万円で初年度は3回まで助成金が出る(5年通算10回まで)。

だが、「アラフォー世代の働く女性にとっては、この所得制限はきつい。結局すべて自費で賄うという例が少なくない」と、『女子と出産』(日本経済新聞社)の著者で、女性の不妊治療に詳しい山本貴代さんは話す。卵子の老化と戦い不妊治療に取り組むには、一定の経費も覚悟しなければならない。

もう一つ知っておくべきは、不妊を招くリスク要因は年齢だけではないということだ。たとえば喫煙。卵巣機能を低下させたり、閉経を早めたりといった影響が指摘され、妊娠率やARTの成功率にもマイナスの影響があるとされている。肥満や過度なダイエットによるやせも、ホルモンバランスを崩して月経異常や不妊を招く。このほか、糖尿病などの生活習慣病や、感染症、飲酒などにも注意が必要だ。

妊活は今や情報戦。この晩婚化時代、「パートナーができてから」「結婚してから」妊娠について考えるのでは、遅すぎる。できれば20代から、遅くとも30代前半には、妊娠・出産の正しい情報を収集していくことが、悔いのないライフプランを築く早道といえそうだ。

新村 直子 医療健康ジャーナリスト

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しんむら なおこ

日経BP社に25年勤務。『日経ヘルス』副編集長時代から不妊治療をテーマに取材。現在は月刊誌『いきいき」副編集長を務める。

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