お台場にカジノを作れば、日本は二等国になる HIS澤田会長、首都へのカジノ建設に異論

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──現状は東京のお台場が最有力候補地とみられていますが。

確かに東京は政治と経済の中心であり、ビジネスやコンベンションには向いていると思う。が、カジノが首都に必要なのかどうか。世界を見渡しても、米国ではネバダ州のラスベガス、中国では北京から遠く離れたマカオ、という具合にどの国も首都にはカジノを置いていない。フランスではパリから100キロメートル圏内にはカジノを作ってはいけない、という規制がある。ロシアではモスクワにもカジノを作ったが、後に禁止して大都市から離れた僻地でしか開設できないようにした。

これは私見だが、首都にカジノを置いてはいけない、というのが目に見えないルールのようなものだと思う。首都にカジノを置くと、その国は二等国になってしまう。東京にカジノを置いたら3~5年後、日本は確実に二等国になりますよ。

──投資家は東京での建設を希望しているように思います。

それは当然だ。事業者は儲かる場所のほうがいいに決まっている。私だって、もし事業者として進出するのであれば、東京を選ぶ。首都圏には人口が集中しており、地方と比べると金融資産を持った裕福な人がたくさんいる。地方にカジノを作るよりも、ずっと簡単だ。しかし、東京に作れば一極集中がますます進むだけ。地方は枯れてしまう。そうなってしまっていいのか、真剣に考えるべきだと思う。

地方に作る場合には、その地方ならではの魅力をどうアピールできるかが重要。長崎の魅力は、アジアに近いこと。とはいえアジアにはマカオがあるため、今さらマカオと真正面から競争しようとしてもダメだ。マカオにはない魅力は観光資源。長崎市は世界新3大夜景に選ばれたほど風光明媚だし、近くには雲仙、嬉野、武雄などの温泉観光地がある。周辺に楽しんでもらえる場所がたくさんある点が特徴だ。

──2011年には国際フェリーで上海と長崎を結び、公海上でのカジノ運営を計画しました。

尖閣諸島をめぐる日中間の問題もあり、キャンセルが多発するなど就航を維持できなくなったのであきらめた。リース契約で調達したフェリー船は、すでに海外法人に貸し出しており手元にはない。

正直なところを言うと、僕は本来、カジノにはあまり積極的ではない。今の状態でもハウステンボスの入場者やホテルの宿泊は伸びており、利益も上がっている。カジノ開設のために使う時間をほかのことに使ったほうが、よほどいい。今回のプロジェクトは長崎県のため、佐世保市のため、という思いでやっている。アジアの客を呼び込み、東洋一の観光地となるようお手伝いをできれば、と考えている。

(撮影:今井康一 =週刊東洋経済2013年6月8日

山田 俊浩 東洋経済 記者

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やまだ としひろ / Toshihiro Yamada

早稲田大学政治経済学部政治学科卒。東洋経済新報社に入り1995年から記者。竹中プログラムに揺れる金融業界を担当したこともあるが、ほとんどの期間を『週刊東洋経済』の編集者、IT・ネットまわりの現場記者として過ごしてきた。2013年10月からニュース編集長。2014年7月から2018年11月まで東洋経済オンライン編集長。2019年1月から2020年9月まで週刊東洋経済編集長。2020年10月から会社四季報センター長。2000年に唯一の著書『孫正義の将来』(東洋経済新報社)を書いたことがある。早く次の作品を書きたい、と構想を練るもののまだ書けないまま。趣味はオーボエ(都民交響楽団所属)。

 

 

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