なぜ東大は「世界大学ランキング」が低いのか

人文系学部「廃止騒動」は世界に逆行している

国土が狭いシンガポールは、人的資源としての大学への投資を重視してきた。中国も1990年代以降、大学への大規模な投資を何度も行ってきた。ベイティ氏によれば「その総額は約130億米ドル。米国などで研鑽を積んだ中国の研究者を呼び戻し、研究の環境を整えたほか、国際的なパートナーシップ作りにも力を入れた」という。

一方の東大はアンケートによる評判、教員と学生の比率など、教育力は他大学よりもはるかに高かったものの「国際性のスコアがきわめて低かった」(マネージングディレクターのバラット氏)。その他、日本勢では京都大学が94位に入ったぐらい。あとは軒並み200位以下となっている。

日本の大学の厳しい現状

英タイムズ・ハイヤー・エデュケーションのウェブサイトに掲載されたランキング。東京大学は39位、京都大学は91位だった

日本の大学が置かれている状況は厳しい。18歳人口は2018年から徐々に減少し、2020年以降は減少ペースに拍車がかかる。

一方、日本の大学数は国公立・私立あわせて775校(2016年4月1日時点)にのぼる。日本私立学校振興・共済事業団によれば、2016年度は私立大学の44.5%が定員割れの状況だった。

ベネッセを含めこれまでの日本の大学ランキングは、入試の難易度や就職率に基づくものが一般的だった。大学が“就職予備校”となっているのではないかとの指摘も根強い。

大学のランキング化については、慎重な声が上がるのも事実だ。東京大学や京都大学など11大学で構成される「学術研究懇親会」は今年7月、「本来多種多様な価値が集積する大学をランキングという1つの順位指標で評価すること自体がそもそも無理なことであるといわざるをえない」との見解を公表している。

たとえば論文の引用数については、「身近な研究者集団の中では互いの研究成果の情報交換も速やかに行われ、その結果、被引用数が増加しやすいのは当然である。(中略)日本の研究者は欧米の研究者に比べると地理的/言語的にハンディを背負っている」という。

こうした背景も踏まえ、THE社は提携するベネッセコーポレーションとともに、日本版の大学ランキングを策定中だ。ベイティ氏は、「われわれが目指すのは、従来のランキングでは見えてこなかった、すばらしい教育を行っている大学を見つけ出すこと」という。

ただ、「研究力や教育力が弱く、学生に十分な成果を提供できない大学は、私立大学ならば合理化や淘汰の対象になるかもしれない。その場合もデータは(合併や閉鎖などの)判断の根拠になる」と話す。

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