携帯3社の「割引クーポン」は何が問題なのか 消えない「実質ゼロ円」に総務省が厳重注意

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次の図はiPhone 6sの例である。ドコモとソフトバンクは最大2万円強のクーポンを送っていた。ドコモは他社からの乗り換えと機種変更の両方で、ソフトバンクは機種変更に限り、実質ゼロ円を下回っていた。

携帯3社は「クーポンがガイドラインに抵触するとは思わなかった」と口をそろえるが、ガイドラインには「端末購入補助を目的とした商品券は規制対象」とある。クーポンには「ケータイ購入ご優待」「MNP(乗り換え)限定」などの文字があるので、ガイドライン違反は明白だった。

今回の指導でクーポンの手法は封じられたが、大きな抜け穴が残っている。中古端末の下取りだ。ガイドラインは、一般的な買い取り価格を著しく超えない場合、下取りは規制の対象外だとしている。

下取りを前提として、携帯3社はネット上で「実質ゼロ円以下」を強く推している。たとえばKDDIはホームページで「iPhone 7(への機種変更)の実質負担額0円 さらに1万8120円(をポイントで)還元」とアピールしている。

値引きでしか差別化できない?

実際、3年前に発売されたiPhone 5sの場合、中古端末業者の「携帯商店」や「ゲオ」は9000円で買い取っている。しかし、携帯3社は下取り価格2.2万〜2.6万円と倍以上(10月20日時点)。高額下取りによって端末価格を値引きしている可能性が濃厚だ。

総務省もこうした実態は把握している。同省関係者は「ガイドラインの穴は何が何でも埋める」と意気込んでおり、高額下取りにも早晩手が打たれそうだ。

根本的な問題は、なぜ実質ゼロ円販売をやめられないのかということだ。「米アップルの販売ノルマが厳しいから」「格安スマホへの顧客流出を恐れている」など、関係者の間では憶測が飛び交う。

だが、その核心は、値引き以外で差別化できるほどのサービスを生み出せていない点にある。厳重注意を機に、「値引き頼み」の現状から抜け出す必要がある。

山田 雄一郎 東洋経済 記者

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やまだ ゆういちろう / Yuichiro Yamada

1994年慶応大学大学院商学研究科(計量経済学分野)修了、同年入社。1996年から記者。自動車部品・トラック、証券、消費者金融・リース、オフィス家具・建材、地銀、電子制御・電線、パチンコ・パチスロ、重電・総合電機、陸運・海運、石油元売り、化学繊維、通信、SI、造船・重工を担当。『月刊金融ビジネス』『会社四季報』『週刊東洋経済』の各編集部を経験。業界担当とは別にインサイダー事件、日本将棋連盟の不祥事、引越社の不当労働行為、医学部受験不正、検察庁、ゴーンショックを取材・執筆。『週刊東洋経済』編集部では「郵政民営化」「徹底解明ライブドア」「徹底解剖村上ファンド」「シェールガス革命」「サプリメント」「鬱」「認知症」「MBO」「ローランド」「減損の謎、IFRSの不可思議」「日本郵政株上場」「東芝危機」「村上、再び。」「村上強制調査」「ニケシュ電撃辞任」「保険に騙されるな」「保険の罠」の特集を企画・執筆。『トリックスター 村上ファンド4444億円の闇』は同期である山田雄大記者との共著。

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