広島の圧倒的強さをつくった「チームの結束」 「レジェンド」黒田は日本一で引退できるか

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もちろん、セ・リーグを独走してのリーグ優勝の要因として、緒方監督が昨年よりもコーチ陣の意見を採り入れて、選手の自主性を重んじるようになった「変化」があったことも一つの理由だろう。だが、戦っている相手にとって最もやっかいだったのは――。

あるセ・リーグのライバル球団のスカウトは語る。「盗塁数118という数字以上のプレッシャーを、各球団は感じていただろう。なぜなら、(盗塁に合わせて打撃を絡める)ラン&ヒットの数はおそらく、その数倍。打者と連動した『足』の脅威は対戦チームのバッテリーに大きな重圧となっていた」

チーム盗塁数100の大台を超えたのは広島だけ。しかも、それだけではなかった。機動力に加えて、絶好球を見逃さない打者の積極性、集中力も足への脅威を何倍にも増幅させていたのだ。

「足」とともに、攻撃の質を高めたのは「対応力」の向上だ。6月下旬の11連勝時に、広島の前監督である野村謙二郎氏はこう話していた。

「各打者が最初の打席で相手先発にタイミングが合わなくても、2巡目でうまく対応する姿が目立つ。優勝するチームは相手に考えさせる野球ができるもの。今の広島は足も含めて『何をやってくるか分からない』と相手に思わせている。そういうチームは、試合をコントロールできる」

相手先発投手の出来が良い時には、1巡目で完璧に封じ込められても、2巡目は狙い球を変えたりと、選手が柔軟に対応できていたという。個の力でなく、チーム全体で崩す攻撃の形が自然と出来上がってきたというのだ。すでにこの時点で、野村氏は「ミスなどで自分たちから崩れることがなければ、問題はない」と優勝への確かな力を感じ取っていた。

本塁打、打点で2冠のDeNA筒香をどう抑えたのか

投手陣もCSファイナルステージでは、チーム全体で抑えようと一丸になった。その結果、DeNAの大黒柱にして、リーグを代表する強打者である筒香嘉智を16打数1安打と完璧に封じたのだ。第1戦に先発したジョンソンは、内外角に緩急を使う丁寧なピッチングをしてみせた。計12球を通じ、ストライクゾーンの中央に来た球はゼロ。決して攻め急がず、四球を出しても構わないという意識の中でコーナーに散らした。

それが効いた。筒香のバッティングが明らかに変化したのだ。広島の小林投手コーチは「(CSを通じて)筒香はストライクゾーンを広くとっていた」と明かす。ジョンソンの絶妙な配球が、筒香本来のゾーンを狂わせたのだ。シーズン中は滅多に見られなかったのに、ボール球に手を出す姿が試合を追うごとに目立った。おそらく、日本シリーズでも第1戦先発はジョンソン。CSと同じように緩急で日本ハムの主力を封じることができれば、2戦目以降の投手陣も乗っていける。筒香封じを通じて、投手陣も短期決戦の戦い方を肌で感じ取ったはずだ。

日本シリーズでは、過去3年連続でパ・リーグ球団が日本一となっている。交流戦を見ても、パの実力上位は揺るぎないものとなっているが、今年の広島は違う予感を漂わせる。交流戦では、セ球団唯一の勝ち越しとなる11勝6敗1分けをマーク。日本ハム戦は旭川、札幌ドームという敵地で2勝1敗と勝ち越している。

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