カープ新井が独白!「元職場」で生きる覚悟 2000本安打を達成した39歳の熱い思い
39歳、生涯で一番緊張した打席
「これはまずい……。引退試合じゃないんだぞ」
ネクストバッターズサークルから、ずっと足が、ガクガクと震えっぱなし。バッターボックスに入っても、その震えはしばらく止まらなかった。
2015年のプロ野球開幕戦。8年ぶりに復帰した広島東洋カープでの最初の打席は、7回、前田健太の代打だった。プロに入って17年、それなりに大きな舞台も経験してきたつもりだが、生涯で一番緊張した打席、そしてもっとも忘れられない打席になった。
代打に備えて、ベンチ裏で素振りをしていた時から、胸の鼓動が尋常ではなく高鳴っているのを感じていた。
「本当に応援してもらえるのだろうか?」
キャンプやオープン戦では、ファンの人たちからは温かい声援をもらっていた。それでも阪神タイガースに移籍した2008年、旧広島市民球場での最初の打席で受けたブーイングは、今でも鮮明に記憶に残っている。それはある意味トラウマのようになっていた。またあんな状態になってしまうのではないか、そんなことを考えて、すごくドキドキしながら、素振りをしていた。
そしてその時がやってきた。ベンチから「新井、行くぞ」と声がかかった。
「来た!」
ベンチ裏から階段を上がり、グラウンドに出た。
その瞬間、球場全体から「ウォー」という、ものすごい歓声が起こった。ブーイングではない、正真正銘の歓声だ。「アライー」と、名前を呼ぶ声も聞こえる。「ウソだろう?」と思いながらネクストに立つと、全身に鳥肌が立ってくるのがわかった。足が震え、思わず泣きそうになってしまったほどだった。
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