カープ新井が独白!「元職場」で生きる覚悟 2000本安打を達成した39歳の熱い思い

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

広島生まれで、広島で育った僕は、子供の頃からカープファンとして育ってきた。だからカープファンの気持ちは、少しはわかるつもりだ。そういう意味で、ファンの立場として考えてみても、新井貴浩という選手の復帰には納得がいかないだろう。

復帰について、基本的に相談は誰にもしなかった。自分一人で考えるべきだと思ったからだ。家族にも「カープに戻るかもしれない」という話だけはしたが、相談はしなかった。

自分一人で、とにかくずっと悩んでいた。もう二度と着られないと思っていたカープのユニフォームをもう一度着ることができる喜び。その一方で、どのツラ下げて戻ればいいんだ、という不安。FAでカープを出る時も相当悩んだが、それ以上に悩んだといえるかもしれない。

黒田さんも背中を押してくれた

黒田(博樹)さんとも、相談ではないが、移籍について何度か話をしていた。黒田さんは2歳上の先輩で、前にカープに在籍していた時からいろいろ面倒をみてもらっている。先輩なので、波長が合うという言い方は違うかもしれないが、共感することが多いし、基本的な考え方は同じだと思っている。

カープでは、黒田さんが務めた選手会長の座を、僕が引き継いだ。Bクラスが続くチームで、一緒に苦労した同志のような存在だった。お互いにカープを離れてからも、頻繁に連絡は取り合っていた。

「お前、どうするつもりなんだ?」

電話でのやりとりで、黒田さんにこう聞かれた。その時は、まだ黒田さんも自身のことについて、何も決めていない時期だったが、僕のことを心配してくれているようだった。

「帰りたいけど、帰れないです」

そう答えるしかなかった僕に、黒田さんはきっぱりと言った。

「関係ないやろ」

僕は何も言えなかった。

「帰ればいいんだよ。関係ない。大丈夫だ」

背中を押された気がした。僕の気持ちは、徐々にカープに戻る決断に向かっていった。

たとえファンの人たちの罵声を浴びても、周囲の人に批判されてもいい。ブーイングの中でグラウンドに立って、野球をやることになっても仕方がない。カープに帰ろう。僕は決断した。

次ページ自分を追い込む
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事