カープ新井が独白!「元職場」で生きる覚悟 2000本安打を達成した39歳の熱い思い
プロ初打席の時も緊張したが、その比ではなかった。もうすぐ40歳になろうというのに、打席に入って足が震えるような経験をするなんて、思いもしなかった。
古巣から「帰ってこい」と声がかかる
2014年のシーズンが終わった頃、僕の気持ちはタイガースを退団することで、ほぼ固まっていた。キャンプから「競争だ」と言われ、開幕の時点ではその競争に勝ったはずなのに、僕に出番は回ってこなかった。
「ここでは競争はできない」
そう感じた僕は、それなら自由契約になって、もう1回、最後の勝負をしようと決めた。何よりも、もっと野球がしたい、もっと試合に出たいという気持ちが強かった。それでもし、どこも獲得してくれる球団がなかったら、その時は潔くユニフォームを脱ごう、と思った。ただ、移籍先については「カープだけはない」と思っていた。
話は8年前に遡る。2008年、僕はFA宣言をしてタイガースに移籍した。FAは選手の権利とはいえ、一度は自ら飛び出した球団に再び戻るなんて、特にファンは絶対に許してくれないはずだ。球団から声をかけられることもない、というのが普通の考えだ。だからカープに復帰するという話が出ているということは、本当に「まさか、まさか」の出来事だった。
それを聞いたのは、タイガースの南信男球団社長と話をした時だった。その時はまだ、他球団の関係者と話はしておらず、自分からコンタクトを取ることもなかった時期だった。
南社長と別れると、すぐにカープの鈴木清明球団本部長に電話を入れた。
「さっき南社長と話をして、カープが僕のことを気にかけてくれていると聞いたのですが、本当ですか?」
鈴木球団本部長はひと言、広島弁でこう答えた。
「そういうことじゃ。帰ってこい」
僕は本当にびっくりして、「ええっ!」と心の中で叫んでいた。驚いたと同時に、すごく嬉しい気持ちが最初にきた。一度出て行った選手に対して、そんなことを言ってもらえるとは思っていなかったので、本当に嬉しかった。
瞬間的に「帰りたい」と思ったが、ふと状況を客観視してみると、「お前は帰ってはダメだろう」ということが、すぐに頭に浮かんだ。一度出て行った人間が、どのツラを下げて帰って来るんだ。そこから自分の中で、強い葛藤が始まった。
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