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日銀の政策は資源配分の効率を低下させる 超低金利政策は何をもたらしたのか

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  • 櫨 浩一 学習院大学 特別客員教授
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借り入れをして貸し家を建設してしても期待したほど借り手が集まらなければ、投資を行った人は債務の返済に苦しむことになる。1980年代後半のバブル景気では、転売を目的としたワンルームマンションへの投資がブームになった。ユニットバスと最低限の調理ができる小さな調理台が付いただけの狭い部屋でも飛ぶように売れたが、バブルが崩壊すると投資家は債務の返済に追われることになった。

今回は、2020年の東京オリンピックや最近の訪日客数の増加による民泊という需要も喧伝されているが、800万戸の空き家の上にさらに毎年何十万戸もの貸家を建設しなくてはならないというほどの需要ではないだろう。

多くの投資家がそろって投資採算の目算が狂ったということになれば、失敗の穴埋めのためにするために多くの家計で消費を削減する必要に迫られて、経済は大きく落ち込んでしまう上に、税収も大きく減少してしまう恐れがある。

失業よりも人手不足が問題なのに

多数の失業者がいたり工場の生産設備の稼働率が低かったりするなど、国内に未利用・低利用の資源が大量にあるという場合には、金融緩和政策で需要を喚起し、失業者を減らして生産設備の稼働率を高めれば、資源の利用効率は上がる。しかし、日本の失業率は既に3%程度に低下しており、失業よりは人手不足が問題となり始めている。

ケインズは穴を掘って埋め戻すという需要でも意味があると言ったが、それは大恐慌のような著しい需要不足を背景とした時代のことだ。チャーチルとケインズは相性が悪く、チャーチルが「ケインズは同じ問題に二つの意見を言う」と皮肉を言ったという話が残っているが、ムダな需要でも必要だというのは時と場合による。現在の日本経済では大量の失業者という未活用の人材資源があるわけではないので、金融政策によって利用効率が高まるという効果は期待し難い。

日本経済の資源の効率的な利用を促進することを目指しているはずの超低金利政策は、相続税対策の貸家建設を促進して、かえって経済全体の効率を低下させてしまうなど、本来の目的からすると逆効果となっているのではないだろうか。
 

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