日銀の政策は資源配分の効率を低下させる 超低金利政策は何をもたらしたのか

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多くの日本人が金持ちになって、休暇で利用する別荘や残業で遅くなった時に寝泊まりするためのセカンドハウスを持つようになったというであれば、空き家の増加は意図されたもので、大きな問題ではない。しかし、こうした二次的住宅は40万戸程度で、空き家全体の中のわずか5%を占めるに過ぎない。820万戸の空き家のうちで賃貸用住宅は430万戸と半分以上を占めている。

大量の空き家があるという状況の中で、超低金利で貸家の大量供給を促進することに、どれだけの意味があるだろうか。 人口が減少する中でも高齢単身世帯の増加によって世帯数の増加はしばらく続くと見られるが、それでも世帯数は2019年をピークに減少に転じると予測されている。住宅の平均面積の拡大や設備の充実という面で、住宅投資の必要性はなくならないものの、単純に住宅数を増やすという意味はなくなっている。

ムダを付け加える投資は将来の所得を減らす

空家が13%以上にも上るということは、日本の住宅資産価値約357兆円(国民経済計算年報2014年末)から計算すると数十兆円の資産が使われることなく放置されていることになるが、貸家の大量供給はさらに空き家を増やすという形でムダを付け加えることになってしまうのではないか。

住宅投資はGDP(国内総生産)の需要項目の一つなので、誰も住むことがなく使われない住宅でも建設された時点ではGDPを拡大させる。しかし、投資が行われれば所得が生まれるという点だけを強調し過ぎるのは問題だ。確かに投資が行われた時点では所得が生まれるが、その後は固定資本減耗が所得を減らすことになるので、投資で作られた施設が期待通りに利用されて価値を生み出さなければ却って所得が減少してしまうということが起こる。

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