「アツすぎる精神論」にうんざりの人たちへ

「ピカソからの7つの助言」に反論する

これから私が書こうとしていることに一定の批判も覚悟しているのですが、最近、目にした文章で成長のあり方を示唆するよい例(違和感を覚えた例)がありました。ここで紹介し、それぞれに私なりに反論を試みることで、成長のあり方を浮き彫りにしていきたいと思います。

さて具体的な違和感を覚えた文章例というのは、「ピカソからの7つの助言」というものです。Facebook上で流れ、相当数の「いいね!」やシェアがされていたのでご存じの方もいるかもしれません。きっと共感者も多いのでしょうが、私は正直、ほとんど共感できませんでした。逆にこの内容を信じて鵜呑みにしてしまうと、実はうまくいかないことのほうが多いのではないかとさえ思っています。私ごときが僭越ですが、勇気を振り絞って反論し、そこから成長のためのリアリズムを考えます。

「可能性」より「限界」を知ることが大事

<ピカソからの7つの助言(囲み部分が引用。「⇒」以下が私の反論)>

1. 必ずできると信じろ

「思いついたことは出来る。思いつかないものは出来ない。これは避けがたく、明白なことだ。」

⇒私は、自分の可能性を信じることより、自分の限界を知ることのほうが何倍も大事だと思います。どんなに頑張ってもできないものはできません。もちろんチャレンジすることは重要ですし、松下幸之助翁も「私は失敗というものをほとんどしたことがない。なぜなら成功するまでやり続けるからだ」という趣旨のことを言っていて、それはそれとして共感もするのですが、一方でわれわれのような凡人がこの名言を真正面にとらえすぎてしまうと、自分の限られた資源の大いなる浪費に終わってしまう可能性が高いと思います。

思いついたら挑戦するのも大事ですが、その過程で限界をしっかり見極め、その限界を物差しに、ダメだと感じたら、これまでの投入資源を捨てる勇気を持つことが大事ではないでしょうか。

2. 限界を超えろ

「私はいつも自分の出来ないことをする。どうやればいいのかわかるからだ。」

⇒これも上と似た話で、そもそも超えられないものが限界なので、超えられたらそれは限界とは言いません。自分の限界を知りその範囲の中で、得意分野を最大限に活用して勝負することが重要なのだと思います。その勝負では、得意分野である程度余裕を作り、そこで得た余裕を使って苦手分野を人並みにすることまで持ち上げていく(必ずしも苦手分野を得意分野にしようとする必要はありません。そこまでやると非効率です)ことが望ましいと感じます。

私はかつてのコンサルティングのキャリアの中で、人事に強いコンサルティング会社から戦略に強いコンサルティング会社に転職したことがありました。転職当初、お手並み拝見モードでみられていた時期のことです。

私は自分の得意な人事コンサル分野に積極的に関与してそこで評価を獲得し、精神的には余裕、肉体的には余力を作りました。そこからまだ右も左もわからなかった戦略コンサル分野を少しずつ鍛えていきました。肉体的余力があった分、未知の分野に人より多く時間を投入でき、精神的に余裕があった分、未知な分野をうまくこなせなくても、社内でパージされることなく生き残ることができました。

自分の限界を知ったうえでのある種の資源配分(ポートフォリオ)です。

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