衆議院選挙における「不平等さ」の変遷
政治学者の菅原琢氏は、ジニ係数を用いて定数不均衡の度合いを示した。ジニ係数とは、所得不平等の測定などに使われる指標だ。
この場合、各選挙時点で、すべての議席に同じ数の有権者が割り当てられるような架空の議席配分と、実際の議席配分を比較してジニ係数を算出する。数値が大きくなるほど、選挙制度全体として不均衡が大きく、農村部が過剰代表されることを意味する。
上の図では、ジニ係数を縦軸に、「一票の格差」を横軸に示している。要するに、中選挙区時代に実施された「一票の格差」の縮小は、あくまでも有権者数最大と最小の選挙区に注目したものであって、選挙制度全体の議席配分における不均衡の是正には、ほとんど効果がなかった。
一方、裁判所の「違憲」という判断は相次いでいるが、小選挙区制の導入時に、この定数不均衡が大きく是正されていたのは確かな事実なのである。
今回の区割り審の勧告では、5県の定数をひとつずつ削減することのみが前提条件となっており、ほかの42都道府県の議席数は(区割りが変わっても)変わらない。その結果、大阪府より人口の多い神奈川県が、議席数では大阪府より少ないという逆転現象などは維持される。
2011年の最高裁判決は、衆議院の議席配分について、「0増5減」より抜本的な改革を求めている。特に「一人別枠方式」――全都道府県にあらかじめ一議席配分する方式――を改める旨が明記された。
有権者数最大と最小の選挙区の「一票の格差」の調整だけでなく、議席配分のやり直し、前述のジニ係数を今よりさらに下げるような選挙制度全体での定数不均衡の是正が求められているのだ。
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