「一票の格差」が隠す真の問題、定数不均衡
一人の代表を選ぶのに、有権者の数が2倍も違うのは、投票価値の不平等を意味し、法の下の平等に反すると批判される。総選挙のたびに違憲訴訟が起こされてきたが、東日本大震災直後の2011年3月23日には、最高裁が「違憲状態」を認め、国会にその是正を要求することになった。
「0増5減」に基づく区割り審の勧告が「一票の格差」をギリギリ2倍以内に抑えたことが報じられているように、この数値が2倍を超えるかどうかのラインが焦点になっている。
しかし「一票の格差」が2倍を超える状態は、1996年に現行の小選挙区制が導入されてから現在まで続いている。
また、選挙制度改革以前の中選挙区制時代、総選挙の定数訴訟では、1972年(4.99倍)と1983年(4.40倍)に違憲判決が、1980年(3.94倍)に違憲状態の判決が下されてきたが、3倍に満たないケースで違憲とされたことはなかった。歴史を振り返ると、「一票の格差」が2倍を切るという要求は厳しいのだ。
投票価値の不平等は、法の下の平等という観点から問題にされるが、形式的な平等だけでなく、実質的な問題も指摘されている。すなわち、相対的に人口の少ない地域が過剰に代表されることで、政府の採用する政策が人口の少ない地域に偏った利益をもたらすというものだ。
典型的なのは都市部の代表が過少で、農村部の代表が過剰なことから、農村部への利益誘導が進められるという主張である。このような傾向は実証的に認められているところもある。
定数不均衡、つまり過剰代表/過少代表に起因する政策の歪みは、それが実際に存在するとしても、「一票の格差」の是正で解決される問題ではない。「一票の格差」は、あくまでも最大値と最小値を比べたものにすぎないからだ。
極端な選挙区について、いくつか調整を行ったとしても、過剰代表される地域が存在するという大勢は変わらないのだ。
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