「違い」ばかり探せば社会の亀裂は拡大する 小田原市が速攻で熊本支援を決めた理由

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井手:私たちには城がある、熊本も城がある、もし城が壊れたらどうする、と想像をすると、小田原の人たちは喜んで熊本の人たちのためにおカネを払う。

同じものが何かという当たり前のことが考えられるようになれば、もっと想像力が働いていって、困っている人たちもそうでない人も、お年寄りも若い人も女の人も男の人もみんなが助け合う社会を作っていける。

木本:うーん。その例えは大変分かりやすいですね。

「オール・フォー・オール」への発想転換が必要

井手: 財政とはみんなでおカネを払って、みんなの暮らしを考えることです。せめてこの財政というフィールドでは同じことを考えていいと思います。僕は以前読んだ論文にヒントをもらって「all for all」という言葉を使っています。ラグビーで「one for all, all for one」という言葉があります。これはとても良い言葉だと思います。でも、ラガーマンを敵に回すわけではないのですが、one for allというと、みんなのために自分一人が生きなければいけない、全体主義のような、みんなの犠牲になれという感じがあります。all for oneは、一人の人間をみんなで助けるみたいな、社会主義のような匂いを感じるんです。

木本:ラグビー競技の精神としては尊いけれど、財政という面で考えると違和感があるということですね。

井手:そう。困っている人を、とにかく助けようというのはなにかが違う。みんながみんなのことを考える社会。みんなには自分も入っているから、「自分も含めたみんながみんなの幸福を考える社会」があってもいいと、僕は思うんです。

そんな財政を作れれば、他人のあら探し、犯人探し、袋叩きをせずに共通点を大事にしながら自分の幸せを考えられるようになるんじゃないかと思います。

木本:そうですよね。政治も誰が悪いねん、という方向に議論が行くのが当たり前ですもんね。

井手:政党は英語ではパーティ。パートつまり部分だから、線を引いてこっちの部分とあっちの部分を作って、私たちはあなたの味方ですよ、というのが政党政治。線を引いて分断線を作って、あなたの味方です、と票を集める。だからパーティというのです。今政党がたくさんあって、みんなが部分部分を作っていったら、社会はバラバラになります。だから、今こそ「何が同じか」を語る政治家や、同じ部分を大事にする政党が現れれば、支持する人は増えると思います。みんなが幸せになるほうがいいじゃないですか。

木本:そのとおりですね。政党が手を組むことが前回の参院選でも行われました。選挙に勝つために手を組む。考え方とか細かいことは後から決めようという感じでした。

井手:勝つためにならという思考でしたね。

木本:若い人たちには、「政治ってそんなもんなんや」という気になってしまいますよね。

井手:でも、野党共闘で面白かったのが、安保や外交など、共産党と民進党は違うところがたくさんあるわけですよ。でも共に戦う時には違うところに目をつぶって、同じところを主張する。これって本質ですよ。人間が共に戦う時には、違うところではなく同じ点を大事にするってことです。絆のある助け合う社会にするならば、何が違うかでなく、何が同じかを考えなければならない。その良いお手本です。

(構成:高杉公秀、撮影:梅谷秀司)

木本 武宏 タレント

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きもと たけひろ / Takehiro Kimoto

1971年大阪府生まれ。1990年木下隆行とお笑いコンビTKOを結成しツッコミを担当。2006年、東京へ本格的進出。S−1バトル優勝、キングオブコント総合3位などの受賞歴がある。現在は、ドラマやバラエティなどピンでも活躍中。最近ライザップで肉体改造に成功。今度は知力を改造して新境地を開く野望を持っている。

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